二日目 抱き合いましょう

「ふぁ……」

 起床時間となって自然光に近く設定された明かりが灯る。今日はずいぶんと冷えているな、空調が壊れたのかなと思いながら身体を動かすと、するりと身体を滑る感触があった。

「ん?えっと……って、何で?!」

 なんで服を何も着ずにベッドで眠っているのか。それに、ベッドの中には自分だけではなく、同じく裸のオベロンもいて混乱する。

 どうして、どうしてこんなことに? もしかして気がつかないうちにオベロンを性的な意味で襲ってしまったとか? そんなことを考えていると、あーうるさいなきみは、と目を覚ましたオベロンが腕を私の腰に絡ませてきた。

「きみ、昨日のこと忘れたわけ?」

「き、昨日って……ぁ」

 ポリネシアンセックスをしようかと言われて見つめ合っていた。最初はすごく恥ずかしかったけれど、裸でいるのにも距離が近い状態にも慣れて、そのまま寝てしまったのだった。

「どうやら思い出したみたいだ。もし思い出さなくてマスター保護者の会に連行されてたら、俺だって無事に戻ってこれるか分からないから良かったよ」

「それは、ごめんなさい」

「それで、今日は二日目だけど、始める前に食事を取ろうか。俺が取ってくるよ」

 霊衣を一瞬で纏って部屋を出ると、一歩、二歩、そこに一瞬座ったと思ったら戻ってくる。どうしたんだろう、何かあったのかな、とベッドの中で待っていると、果物の乗ったプレートを持ってきていた。

「虫たちに準備させたんだ。あまり良いものはないかもしれないけど、どうだい?」

「え、すごく嬉しいし、持ってきてくれた子たちにありがとうって言いたいんだけど」

「それは俺が伝えておくよ。俺の眷属みたいなものだしね」

 何故か少し不機嫌な笑みを浮かべながら近づいてくる。朝食はサイドテーブルに置いて、ベッドに入ってきた。いつの間にかまた霊衣を解いた素肌。促されて背中を向ける形となった腰に腕を回され、ぎゅっと後ろから抱きしめられる形となる。

「ぉ、お、オ、オベロン?!」

「何? きみはいつもうるさいな」

「それは、いきなり抱きしめられたからでっ……って、ご飯食べるんじゃなかったの?」

「何のためにうしろからこうやってると思うわけ?」

 好きに食べれば良いということだろう。サイドテーブルには簡単に手が届いた。

「本当に、食べちゃうよ?」

「だから良いって言ってるだろ?」

「……オベロンも食べようよ」

 きっと二人分あるだろうブドウを後ろを振り返ってオベロンの口に押しつける。食べるのをきっと拒むだろうと思っていたけれど、簡単に口を開け、指すらも少し口に含むようにして食べられた。

「っ!……っっ!」

「ほら、俺に食べさせたいんだろ? 次、よこしなよ」

「……、自分で食べてよ」

 なんともない顔で次をよこせと言うオベロンに絶句しつつ、それでもしょうがないなと思い直して、大きい小鳥に餌でもあげるような気持ちで与えていった。

「さて、きみも十分食べただろ?それだったら二日目を始めようじゃないか。と言ってもだ、もう俺としては始めてるつもりなんだけど、きみはまったくする気はなさそうだよな」

「するって、今日は」

「今日は抱きしめ合う。そこまでだったら進めても良いらしいよ? さ、どうぞ?」

 お皿も空になったし、満腹にはならない程度だけれど程よくお腹が膨れて心地よい。食べている間ずっと抱きしめてきていたのはどうしてなのだろうと思っていたけれど、そういうことだったのかと合点がいった。

 裸で抱きしめ合う。もしかしたら恋人同士になったらそういうこともすることがあるのかなと思ったことがなかった、というわけではなかった。それでも、さあどうぞと改めて言われ言われると照れてしまう。それでも少し浮かされた身体に腕を回して抱きしめると、すぐに背中に同じように回された。

「ひゃっ……!」

 背中を触れるか触れないかぐらいに撫でられる。それが無性にくすぐったくて、身体を震わせつつ足を動かすと、オベロンが息を飲む。

「っ……きみは。まだそこは触れない。俺の場合は翅もだけど、直接触ってはいないだろ?」

「あっ。ご、ごめん」

 足に触れてしまったソコは少しだけ反応していて、私でも勃つんだと不思議な気持ちと恥ずかしさでいっぱいになる。傷だらけだし、他の女の子と比べてもそんなに可愛くないし、魅力的でもない。自分ではそう思っていたけれど、それでもオベロンはこうやって私が女の子であることを証明してくれることに嬉しくなった。

「今日はこうやって抱きしめ合う。まあ、少しはいたずらしても良いんじゃないかと思うけど、お互いの性感帯に触れるのは駄目だってさ。だから俺の場合は翅も含めた場所なわけ」

「翅は偽物だって言ってなかったっけ?」

「俺の言葉を全部きみは信じてるわけ? 正確には翅の付け根だけど、触ってくれるなよ?」  少しのいたずらならして良いんだ。背中をソフトタッチでなぞられる感覚にゾクゾクとしながら、声を出すのを耐える。ただ優しく撫でられているだけなのに、それなのにジワジワと全身に熱が広がっていき、特に下半身が熱くて、前にしたときには痛いだけだったのに中に欲しくてたまらなくなっていたのだった。