「■■■■■、■■■■■」
ん、と声をあげ、目を開ける。目の前には、アドニスがいた。カルデアにいた自分はどうしたのだと思いつつ、目の前の男が確かにアドニスであることを理解して、口を開ける。
「アドニス、どうしたのですか?」
「■■■■■、ほら、こんなにきれいだよ?」
目の前のアドニスは笑顔を輝かせながらおぼつかない足取りで歩いて行く。そんなことをしては転んでしまいますよ、と、目の前のか弱い人間を守ろうとした。ああ、愛おしい。大切な存在。抱きしめたいし、存在を確かめたい。けれど私の腕を彼に回してしまったらゴキリと折れてしまうのではないかと思うほどに細い腕。そんな腕を、手を私に差し出して、秋の深まった森で彼はこちらを向く。
「■■■■■、おいで。怖くないから、ね?」
僕はそう簡単に壊れたりはしないよ。私が彼を壊してしまうのではないかと躊躇してることを理解しているのか、それがおかしいというように、私がこわごわ伸ばした手をぎゅっと握って歩き出す。大丈夫、大丈夫だ。何度も私の頭を撫でながら言ったように、何度も私に手を差し出して、私はそれを手に力を入れないように握ることしかできない。私は、ここは妖精國なのだろうか。それだったらカルデアにいた私は夢だったのだろうか。それを確かめたいと思い、口を開く。
「アドニス……私は」
「大丈夫、今は僕たちしかいない。妖精騎士ガウェインでなくてもいいんだ。僕だけの■■■■■であってほしい、なんていってしまっては、だめかな?」
カルデアが夢なのか、それともこちらが夢なのか。それを抜いてもうれしい。とてもうれしかった。妖精騎士ガウェインである私を■■■■■と呼んでくれるあなたが。この國で私を私として愛してくれるあなたが。私は、あなたのことを愛していました。だんだんと曖昧になっていく夢の記憶の中、なぜか出てくる過去形の言葉。それに鼻がツンとする。きっとこれから来るカルデアのものたちとは戦うことになるのだろう。そのときには全力で。妖精國とアドニスを守るために。そうして、それから。容易に想像できるカルデアでの召喚と皆の様子。負けるはずがないと思いつつ、よほど夢が楽しかったのか笑みがこぼれる。
今の一時だけでいい。夢のことを、皆で楽しんでいた夢をアドニスにも話してみよう。きっと彼なら笑って聞いてくれる。きっと私と同じように。 私はいつものように彼にこえをかけるのだった。
