お嬢さん、俺と結婚してくれませんか?

記念日とクリームソーダ

 今日は、カレンダーに載っているどんな祝日でもない。ただの平日。特別なセールもイベントもない、普通の一日。けれど――私たちにとっては、大切な記念日だった。 初めて触れられて、怖くなかった日。過去に何度も震えた指先で、あの日だけは、自分からそ…

部屋へのお誘い

 何気なく繋いでいる手の仲に、ずっと言えない言葉がたまっていた。別に特別なことをするわけじゃない。それでも、自分の場所に彼を招くというのは、私にとって――すごく、大きな事だった。 この前のカウンセリングで医師に言われた。「あなたがここまでは…

何もできなかった気持ち

 サークル活動が終わったあと、片付けも終わり、他のメンバーがそれぞれ帰って行く中。サークルが入っているビルの裏手の少しだけ風の通るベンチで、二人の男が座っていた。 一人は静かで品のある長身。一人は前述の男よりさらに背の高い、どこか飄々として…

何度も繋がれる手と想い

 あれから、何度も手を繋いだ。サークル帰り、人混みの道、少しだけ冷たい夕方の空気の中で。 どちらともなく手が近づき、指先が触れるたびに、今なら良いかもしれないと思って、何も言わずに指を重ねた。最初のあの日だけが特別なわけじゃなかった。むしろ…