お嬢さん、俺と結婚してくれませんか?

精神科のポスター

 花火が打ち上がる中、サークルの輪がいつもより少しだけ華やかだった。「えー!紫苑さん?!」「うわ、久しぶり」「ていうか来るなら言ってくださいよー!」 そんな声の中で、ふわりと現れた彼女は、前より少しだけ落ち着いた雰囲気を纏っていた。髪は上に…

デートへのお誘い

「というわけで、来週末、サークルで花火を見に行きませんか?」 夕凪の提案に、サークル内の空気が一気に和やかになった。「おお!やる?」「屋台あるところが良いな~」「カメラ持っていこうかな」「あ、場所取り任せてください」 みんなが盛り上がる中、…

好きという気持ち

 検索窓に『朝比奈遼』と入力しかけた指を、輝星は思わず止めていた。 ……何やっているんだろう、私。でも、やっぱり気になる。彼の名前を入れて検索することが、どこかいけないことのように思える自分がいた。まるで「私、あなたに夢中です」と宣言してい…

彼以外との接触

 手が震えていた。 いつものサークルの活動中。夕凪の手がふと触れただけで、輝星の身体が瞬間的に硬直し、逃げるように一歩下がった。「……すいません、驚かせてしまいましたか?」 夕凪はいつもの丁寧な口調で謝る。輝星の事を攻めるでもなく、気まずそ…

ふとした時の安心感

 彼のことは、はっきり言って怖かった。顔がどうだとか、性格がどうだとかではない。『男』というだけで、身体が固まる自分がいることを、私はよく知っている。けれど――最近の朝比奈さんは、何かが違った。前みたいに急に距離を詰めてきたり、気安く触れて…

予測可能な関係性

 ページの間に挟まれた付箋が増えていく。遼は紫苑から借りた心理学の本を、寝る前に数ページずつ読み進めていた。『トラウマ反応とは、課外でなく環境に反応している事が多い』『安心の再構築には、対話よりもまず予測可能な関係性が必要』 なるほど、と遼…