心理学の本
遼はサークルの空気にすっかり慣れていた。なつめはよく笑うし、矢野や井上ともそれなりに打ち解けてきた。 だけれど、彼女だけは変わらない。 輝星は、必要以上に遼に話しかけることはないし、遼から見て、自身の存在をどう見ているのかもよく分からなか…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
輝星の絵
誰かの絵を描くとき。遼はまず、線を観る。輪郭の柔らかさ、眉の角度、睫毛の流れ。その人が今までどんな風に笑い、どんな風に泣いてきたか。全てが、顔のどこかに滲んでいる。 遼から見て、彼女――輝星はとても複雑だった。 視線は強い。けれど、そこに…
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男性恐怖症
遼の初めてのサークル参加から数日。少しずつ雰囲気にも慣れてきた頃であった。その日も一通り作業が終わって和やかな空気の中で雑談が始まる。遼はなんとなく隣に座っていた輝星に手を伸ばした。「髪の毛のここ、ごみが付いてるよ?」 なつめにもするよう…
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プロポーズ
その日の遼の予定は、妹と昼食を摂った後に久々に帰ってきた街をふらつくというものである。滞在先の家族の用事はすでに済ませ、遼は、せっかくだからと妹孝行として一緒に歩いていた。 なつめは今日もよくしゃべるし、よく笑う。目の端に出来た小さなシワ…
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帰国
空港のロビーには、春の陽光が柔らかく差し込んでいる。人々の足取りもどこか軽やかで、これからどこかに旅立つものと、誰かを出迎えるもの。彼らが交差していた。 男、名前を朝比奈遼というものが、スーツケースを一つだけ引いて、到着ゲートを出た。彼は…
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プレゼント
クリスマスイベントも無事に終わり、年末の慌ただしさが社内にも漂い始めたある日。夕凪未来は、休憩スペースに一足早く姿を現していた。手には、ラッピングされた小さな箱。 やがて、なつめが少し遅れてやってくる。「未来さん、お待たせしました――あれ…
Novelつないだ手、最初の一歩,一次創作,一緒に歩み続ける、この日常,余白の庭シリーズ,凪なつ
初めての夜
駅前のカフェで待ち合わせたのは、ちょうどお昼の12時。なつめが手を振ってくれるのが見えた瞬間、未来は自然に微笑んでいた。「こんにちは、なつめさん。今日はちょっと風が強いですね」「こんにちは、未来さんっ。……でも、寒くはないから、春らしい感…
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ファーストキス
付き合ってから三回目のデートは、映画とカフェ、そしてただ並んで歩くだけの、ゆるやかな一日だった。特別なサプライズがあったわけじゃない。ただ一緒に笑って、映画の感想を言い合って、少し先の未来をぼんやり話して。そんな穏やかさが、なつめにとって…
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初デート
付き合い始めて最初の休日。ふたりは、水族館に向かっていた。 海沿いの大型施設。改札を出てからの道すがらも、なつめはずっと落ち着かなかった。何度もスマホを取り出してはしまい、肩のストラップを握る指が、いつもより少しだけぎこちない。「水族館、…
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お祝い
「というわけで――改めまして、おふたりさん!」「「おめでとー!!」」 ぱんっ、と軽快なクラッカーの音が弾け、部室に一斉に拍手が広がった。紙コップのジュース、コンビニのお菓子、カラフルな紙吹雪。それらを囲むようにして、ゲームサークルのメンバー…
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報告
ある日のサークル活動後。 雑談と後片付けがほどよく混ざった穏やかな時間。そんな中で、夕凪未来と朝比奈なつめは、静かにひとつの覚悟を共有していた。「今日、言います?」 小さな声で、けれど確かに届く問いかけに、夕凪は短く頷いた。「はい。逃げず…
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サークルルール:恋愛禁止(発案:代表)
休日の夜。人気の少なくなった駅前通りを、未来と朝比奈なつめは並んで歩いていた。 カフェで軽く夕食を済ませた帰り道。手を繋いでいるわけでもなく、言葉を交わしているわけでもないのに、その距離はどこか親密で、どこか不安定だった。 ふたりの関係は…
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