一次創作

わたしも、夕凪さんが好きです

 夕凪の告白から、数日が経った。 なつめは、あの場で返事をしなかった――というより、できなかった。胸がいっぱいで、喉が詰まってしまって、声にならなかったのだ。でも自分の中に揺らぎはなかった。あのときの夕凪の声、まっすぐに向けられた視線、言葉…

朝比奈さんが好きなんですね

 いつものようにパソコンの前に座り、プロジェクトの資料を整えていた夕凪未来は、ふと手を止めた。静かなオフィス。昼休憩が終わったばかりのはずなのに、思考の奥がひどく騒がしい。 気がつけば、さっきから画面の文字がまったく頭に入っていなかった。タ…

一人の青年と一人の女性として

 待ち合わせは、午前十一時。まだ少し肌寒さの残る春の風が、通り過ぎるたびに頬をかすめていく。 私服姿で並ぶのは、ずいぶん久しぶりだった。「お待たせしました。朝比奈さん」「いえっ、わたしも今来たところです!」 軽く笑い合うその瞬間から、空気が…

男のひと

 昼休みの終わり、サークル室の扉をそっと開けたなつめは、手に一枚のカーディガンを抱えていた。淡いグレーの柔らかな生地は、丁寧にたたまれていて、その端には小さくシワが残っている。それは、夕凪未来のものだった。 直接、お礼を言えるかな。……起き…