原因
サークルの活動が終わったあと、参加者達はそれぞれの荷物をまとめて、ビルのエレベーターへ向かっていく。華やかだった空間が、嘘みたいに静かになった。その空気の中、会議室の扉の前。紫苑が遼に声をかけた。「遼くん、ちょっといい?」 声は落ち着いて…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
好きです
手を繋ぐのは、もう当たり前になっていた。歩幅を合わせてくれることも、無理に話しかけて来ないことも、時々こちらを見て、ふっと笑ってくれる事も――。 全部、心地よくて安心できる日々だった。でも、その当たり前の中に、私の中だけに積もっていった言…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
何もできなかった気持ち
サークル活動が終わったあと、片付けも終わり、他のメンバーがそれぞれ帰って行く中。サークルが入っているビルの裏手の少しだけ風の通るベンチで、二人の男が座っていた。 一人は静かで品のある長身。一人は前述の男よりさらに背の高い、どこか飄々として…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
何度も繋がれる手と想い
あれから、何度も手を繋いだ。サークル帰り、人混みの道、少しだけ冷たい夕方の空気の中で。 どちらともなく手が近づき、指先が触れるたびに、今なら良いかもしれないと思って、何も言わずに指を重ねた。最初のあの日だけが特別なわけじゃなかった。むしろ…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
手を繋ぐ
今まではずっと、触れられることを怖がってきた。気づいたら避けていた。無意識に腕を引っ込めていた。男の人が近づいてくるたびに、脳が逃げろと警告していた。でも、今は――。 数歩先を歩く遼の手に、触れたいと思っている。それが、自分でも信じられな…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
二回目の受診
二度目の通院は、前よりも少しだけ気が楽だった。受付の手続きにも慣れて、診察室の扉を開ける。初診の時に震えていたあの手は、それよりも緊張していなかった。でも「今日はちょっとした検査をしましょうか」と言われたとき、輝星は不意に、背筋にひやりと…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
受診報告
「誰かに話したい」 その感情が、輝星の頭の中にずっと残っていた。昨日、クリニックからの帰り道。残暑の風の中で、自分の選んだ選択に少しだけ誇りを持てたような気がしていた。けれど、その頑張ったという気持ちを誰にも共有できないまま、一晩が過ぎた。…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
受診
知らない駅で降りるのも輝星には少しだけ勇気が必要だった。スマホで何度も地図を確認して、道を間違えて、ぐるぐるして、ようやくたどり着いたクリニックの看板を見上げる。 早めに向かっておいて良かったと思った。看板を見つけた時間は、ちょうど予約の…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
精神科のポスター
花火が打ち上がる中、サークルの輪がいつもより少しだけ華やかだった。「えー!紫苑さん?!」「うわ、久しぶり」「ていうか来るなら言ってくださいよー!」 そんな声の中で、ふわりと現れた彼女は、前より少しだけ落ち着いた雰囲気を纏っていた。髪は上に…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
夏の夜の灯火
夏の夜の暑さを簡単に考えていたわけではない。それでも思ったよりずっと暑くて、着てきた浴衣が汗で重くなっている気がする。それに多少後悔しながらも、ゲームサークルで場所取りをしてレジャーシートを敷いていたその場所に、輝星は足をくずして座ってい…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
デートへのお誘い
「というわけで、来週末、サークルで花火を見に行きませんか?」 夕凪の提案に、サークル内の空気が一気に和やかになった。「おお!やる?」「屋台あるところが良いな~」「カメラ持っていこうかな」「あ、場所取り任せてください」 みんなが盛り上がる中、…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
好きという気持ち
検索窓に『朝比奈遼』と入力しかけた指を、輝星は思わず止めていた。 ……何やっているんだろう、私。でも、やっぱり気になる。彼の名前を入れて検索することが、どこかいけないことのように思える自分がいた。まるで「私、あなたに夢中です」と宣言してい…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝