彼以外との接触
手が震えていた。 いつものサークルの活動中。夕凪の手がふと触れただけで、輝星の身体が瞬間的に硬直し、逃げるように一歩下がった。「……すいません、驚かせてしまいましたか?」 夕凪はいつもの丁寧な口調で謝る。輝星の事を攻めるでもなく、気まずそ…
Novelお嬢さん、俺と結婚してくれませんか?,一次創作,余白の庭シリーズ,遼輝
偶然の接触
その日、怖くないと思ったことが衝撃的だった。 いつものように活動を終えて、荷物をまとめていたときだった。輝星が落としたUSBメモリを遼が拾って差し出す。「これ、輝星ちゃんの?」 指先がほんの数センチのところまで近づいた。いつもなら、輝星の…
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ふとした時の安心感
彼のことは、はっきり言って怖かった。顔がどうだとか、性格がどうだとかではない。『男』というだけで、身体が固まる自分がいることを、私はよく知っている。けれど――最近の朝比奈さんは、何かが違った。前みたいに急に距離を詰めてきたり、気安く触れて…
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予測可能な関係性
ページの間に挟まれた付箋が増えていく。遼は紫苑から借りた心理学の本を、寝る前に数ページずつ読み進めていた。『トラウマ反応とは、課外でなく環境に反応している事が多い』『安心の再構築には、対話よりもまず予測可能な関係性が必要』 なるほど、と遼…
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心理学の本
遼はサークルの空気にすっかり慣れていた。なつめはよく笑うし、矢野や井上ともそれなりに打ち解けてきた。 だけれど、彼女だけは変わらない。 輝星は、必要以上に遼に話しかけることはないし、遼から見て、自身の存在をどう見ているのかもよく分からなか…
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輝星の絵
誰かの絵を描くとき。遼はまず、線を観る。輪郭の柔らかさ、眉の角度、睫毛の流れ。その人が今までどんな風に笑い、どんな風に泣いてきたか。全てが、顔のどこかに滲んでいる。 遼から見て、彼女――輝星はとても複雑だった。 視線は強い。けれど、そこに…
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男性恐怖症
遼の初めてのサークル参加から数日。少しずつ雰囲気にも慣れてきた頃であった。その日も一通り作業が終わって和やかな空気の中で雑談が始まる。遼はなんとなく隣に座っていた輝星に手を伸ばした。「髪の毛のここ、ごみが付いてるよ?」 なつめにもするよう…
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プロポーズ
その日の遼の予定は、妹と昼食を摂った後に久々に帰ってきた街をふらつくというものである。滞在先の家族の用事はすでに済ませ、遼は、せっかくだからと妹孝行として一緒に歩いていた。 なつめは今日もよくしゃべるし、よく笑う。目の端に出来た小さなシワ…
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帰国
空港のロビーには、春の陽光が柔らかく差し込んでいる。人々の足取りもどこか軽やかで、これからどこかに旅立つものと、誰かを出迎えるもの。彼らが交差していた。 男、名前を朝比奈遼というものが、スーツケースを一つだけ引いて、到着ゲートを出た。彼は…
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プレゼント
クリスマスイベントも無事に終わり、年末の慌ただしさが社内にも漂い始めたある日。夕凪未来は、休憩スペースに一足早く姿を現していた。手には、ラッピングされた小さな箱。 やがて、なつめが少し遅れてやってくる。「未来さん、お待たせしました――あれ…
Novelつないだ手、最初の一歩,一次創作,一緒に歩み続ける、この日常,余白の庭シリーズ,凪なつ
初めての夜
駅前のカフェで待ち合わせたのは、ちょうどお昼の12時。なつめが手を振ってくれるのが見えた瞬間、未来は自然に微笑んでいた。「こんにちは、なつめさん。今日はちょっと風が強いですね」「こんにちは、未来さんっ。……でも、寒くはないから、春らしい感…
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ファーストキス
付き合ってから三回目のデートは、映画とカフェ、そしてただ並んで歩くだけの、ゆるやかな一日だった。特別なサプライズがあったわけじゃない。ただ一緒に笑って、映画の感想を言い合って、少し先の未来をぼんやり話して。そんな穏やかさが、なつめにとって…
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