初デート
付き合い始めて最初の休日。ふたりは、水族館に向かっていた。 海沿いの大型施設。改札を出てからの道すがらも、なつめはずっと落ち着かなかった。何度もスマホを取り出してはしまい、肩のストラップを握る指が、いつもより少しだけぎこちない。「水族館、…
Novelつないだ手、最初の一歩,一次創作,一緒に歩み続ける、この日常,余白の庭シリーズ,凪なつ
お祝い
「というわけで――改めまして、おふたりさん!」「「おめでとー!!」」 ぱんっ、と軽快なクラッカーの音が弾け、部室に一斉に拍手が広がった。紙コップのジュース、コンビニのお菓子、カラフルな紙吹雪。それらを囲むようにして、ゲームサークルのメンバー…
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報告
ある日のサークル活動後。 雑談と後片付けがほどよく混ざった穏やかな時間。そんな中で、夕凪未来と朝比奈なつめは、静かにひとつの覚悟を共有していた。「今日、言います?」 小さな声で、けれど確かに届く問いかけに、夕凪は短く頷いた。「はい。逃げず…
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サークルルール:恋愛禁止(発案:代表)
休日の夜。人気の少なくなった駅前通りを、未来と朝比奈なつめは並んで歩いていた。 カフェで軽く夕食を済ませた帰り道。手を繋いでいるわけでもなく、言葉を交わしているわけでもないのに、その距離はどこか親密で、どこか不安定だった。 ふたりの関係は…
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わたしも、夕凪さんが好きです
夕凪の告白から、数日が経った。 なつめは、あの場で返事をしなかった――というより、できなかった。胸がいっぱいで、喉が詰まってしまって、声にならなかったのだ。でも自分の中に揺らぎはなかった。あのときの夕凪の声、まっすぐに向けられた視線、言葉…
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人生ゲーム
「お金貯めて、子ども3人。すごい、夕凪さん、めちゃくちゃ堅実な人生になってる」「ゲームですから。選択肢が限られているなら、できるだけリスクは避けたいんです」「うーん、夕凪さんらしい。……安定志向なんですね?」「そう言われることは、よくありま…
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朝比奈さんが好きなんですね
いつものようにパソコンの前に座り、プロジェクトの資料を整えていた夕凪未来は、ふと手を止めた。静かなオフィス。昼休憩が終わったばかりのはずなのに、思考の奥がひどく騒がしい。 気がつけば、さっきから画面の文字がまったく頭に入っていなかった。タ…
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未来の事、好き?
「なつめ、ちょっとさ、喫茶でも行かない?」 金曜の昼休み。LINEに届いた輝星からの短いメッセージに、なつめは一瞬きょとんとしてから、『うん、いいよ』と返信した。なんとなく、呼ばれる気がしていた気もする。 待ち合わせたのは、駅から少し離れた…
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触れそうになる手
カフェを出た夕方、街にはほんのりとしたオレンジ色の空が広がっていた。低く差し込む夕陽がアスファルトの上に長い影を落とし、風は少しだけ肌寒さを連れてくる。けれどその風さえも、今日のふたりにはやさしく感じられた。 なつめは小さく息を吐いた。隣…
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一人の青年と一人の女性として
待ち合わせは、午前十一時。まだ少し肌寒さの残る春の風が、通り過ぎるたびに頬をかすめていく。 私服姿で並ぶのは、ずいぶん久しぶりだった。「お待たせしました。朝比奈さん」「いえっ、わたしも今来たところです!」 軽く笑い合うその瞬間から、空気が…
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隣にいても、いいですか?
金曜の夜。仕事帰りのビル街には、オフィスの残光とコンビニの灯りがゆるやかに滲んでいた。にぎやかすぎず、静かすぎない空気の中で、なつめは立ち止まったままスマホの画面を見つめていた。「今日もお疲れさまです」「今度、少しだけお話できませんか?」…
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変わらずに在り続けること
夕凪未来は、自分の感情に疎い方ではなかった。むしろ、客観的に物事を見て、感情の動きにも整理をつけながら過ごす日々に慣れていた。けれど、それはあくまで整理できる範囲の話であって、どうしようもなく胸に残る空白には、まだ名前を与えられずにいた。…
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