これは魔力供給じゃなくて

 立香は簡単な戦闘だと思っていた。いつも通りに魔獣たちを倒して、それで帰還するはずだった。けれどその判断が油断を呼んでいたのか、令呪をすべて使い切った末に、味方はサンソンを除いて全て倒され、そのサンソンも自分もボロボロの姿で後退することとなった。そうして何とか敵から逃れられた先の洞窟で、緊急時としての魔力供給を行うこととなったのだった。

「ぅ……ぐっ、ぁ……」

「ま、すたー。やはり、無理やり、は」

「だ、だいじょ、ぶ……だか、ら」

 洞窟の最奥で、口論の末。必要最低限だけ乱された服。そうして無理やり挿れたそこから血が出なかったことに安堵しつつ、あまりの質量にはくはくと口を動かすことしかできない自身を立香は呪う。いつもと違って、苦しいし、痛い。サンソンがどれだけいつも気遣ってくれているのかが分かる、無理やりに致すという状況に身体が引きつる。本当は目の前の彼に助けを求めたいけれど、サンソンは壁に背を預けて息を荒げ、現界を保つためだけに魔力を費やしている。そのため、立香が何とかしなければならない状況であった。

「ますたー、……、やはり、ぼくが」

「だ、だいじょうぶ、だって」

「ですが、顔色もわるいですし」

「でも、無理やり、動いたら」

 肩で息をする立香にサンソンはボロボロになった片手を伸ばす。血に濡れたその手で立香の頬を撫で、大丈夫だというように頷く。

「ぼくは、だいじょうぶ、ですから……時間はあまりとれませんが、それでも。リツカはそれ以上苦しまなくていい。こうして繋がっているだけで、少しずつですが、回復はできていますから」

 そうでしょうと、切り裂かれて血まみれになっていたはずの、今は綺麗になった手で、立香の頬につくことになった血を今度は拭われた。

「無理やり動いたりはしなくて大丈夫です。僕だって、きみに、無理はさせたくない」

「でも」

「今は、僕の身体に手をついて。それで密着してもらえる方が魔力供給にも、なりますからね」

「わかっ……た」

 立香は動くだけで引きつる膣内を意識しないようにしつつ、サンソンの身体へと自身の身体を預けて腕を回す。サンソンも立香の身体に腕をまわし、繋がったまま背中や首筋などを撫でる。そうしているうちに繋がっているそこも慣れ始めたのか、サンソンさえ痛みを感じるようなソコは受け入れ始めていったのだった。

「……リツカ、苦しくはないですか?」

「うん、さっきよりは」

「よかった」

 無理しないように最低限支えるだけにとどめられていた腕に力が込められて、立香はぎゅっと抱きしめられる。それによって膣内に挿れられたままのモノが最奥を突き上げるような形となった。

「んっ、ぁ、あ!」

「リツカ……もしかして、気持ちいい、ですか?」

「わ、わからない。けど、痛くは、ない、よ?」

「そう、ですか。では、これはどうでしょう?」

 耳たぶを食まれ、舐められ。そのまま首筋まで下りていくと、きつめに吸い上げられる。同時に緩められる胸周りのベルトと、下ろされるカルデアのシンボルマーク。さらけ出されることとなった胸に触れられ、先に吸い付かれて。それにゾクゾクとしたものを感じ、まるでいつもの情事の時のような感覚に、立香は抗議する。

「ぁ、の、っんん。待って。今は、ぁ、魔力供きゅ」

「ええ、ですから、魔力供給を」

「だったら、こんなこと」

「しなくても、ですか?ですが、体液がよりあったほうが、いいのでしょう?でしたら、貴女に、気持ちよく感じてもらった方が、いいかと、そう思いまして」

 体液、つまり、いつの間にか小刻みに動かされているそこから、じゅぶじゅぶと鳴らされている愛液のことを指すのだろう。その言葉に、立香は顔を赤くする。魔力供給だから快楽は拾わなくていい、手早く済ませてしまおう。そう思っていた立香にサンソンは、下から突き上げるような動きに変えて、立香を快楽に落とした。

「ぁ、やぁあ!さ、……しゃ、るろ!ゃ、だ、きもちいの、これ、まりょく、きょーきゅーじゃ、ない」

「いえ、これも魔力供給ですよ、立香。んっ……」

「ちが、ぅ……だって、これっ、だと、いつもの、だ、もん。……あっ、ぁん」

 耐え切れないと出された高い喘ぎ声をかき消すように、深い口づけを落とされる。それと一緒に先ほどより勢いがある腰の動きに、潰されるようになってしまうクリトリスの刺激に、孕まされると勘違いした立香の子宮の口が下りてくる。

「はっ、……りつか。わかり、ますか?子宮が下りてきて、僕の先に吸い付くみたいになって、ほら、気持ちいいでしょう?」

「ぁ、あ、き、もちよくなんか」

「うそは、だめですよ?」

 ばちゅん!そう音がするぐらいに叩きつけられて「お“っ♡」という声が出る。これは、ダメだ。立香は本当にわずかに残った理性でそう思いつつも、それは、気持ちいい、幸せ、シャルロにもっと犯されたい、もっとばちゅばちゅってして。そんな言葉にも出来ないような思いにかき消されていく。

「あ、あ!や、ぁん!……しゃ、るろ、もう、だ、めぇ!」

「はっ、ぁ……、りつか、ぼく、も……もう!」

 下りきった子宮の口と、上の口に同時にキスをされ。ぐちゃぐちゃのドロドロに溶かされた理性は無くなって。熱くて、幸せで、切なくて。溶けてしまうように感じながらも、訪れた絶頂に立香は飲まれた。

「ぁ、ぁ、あああっ!」

「んっ、くっ……!」

 熱い、熱い飛沫が子宮に直接注射されているみたいに感じる。立香は力を失ってサンソンに向かって、今度こそ倒れこむ。そんな立香をサンソンは受け止める。 魔力供給とは名ばかりの、いや、名ばかりではなくしっかりと魔力は受けとったけれど、そうとは呼ぶにはあまりにもな恋人同士としての行為をしてしまったことに、わずかに罪悪感を持ちつつ。立香が起きるまで敵を警戒しながらもゆっくりとしていよう。サンソンは立香と自分の身を整えながらそう思うのであった。