四日目 遠回しな触りあい

「んっ……っぁ……ゃ、ああ!」

 ぐちゃぐちゃといじられる下肢を支えるのが難しくなって首にしがみつく。同じものを使っているはずなのにほんのり良い香りのする髪の毛。耳元で漏れる彼の荒い息にぶわりと頬が熱くなる。それと共に、膣内を締めてしまい、気持ちよさと恥ずかしさがいっぱいになった。だめ、だめだって、だめだから……! これ以上されたらおかしくなってしまう。それなのに腰は勝手に動いて絶頂に向かっていく。

「あっ、ぅ、あっ、ぁん!」

 そうして、それから―――。

「あ、あれ?」

「おはよう、マスター」

「語尾に明らかにハートがついてるような声で話さないでよ、オベロン」

「そんな声で話してるように聞こえたか? きみ、耳大丈夫?」

「大丈夫って、いきなりどこに行くつもりっ、で!」

 お昼寝からの目覚め。胸元からのおはようの声の後、そのまま下へ身体を動かすオベロンを止める。あんな夢を見た後だから下がどうなっているかなんて、恥ずかしすぎて想像したくない。それでもオベロンはそんなこと関係なく、太ももの間まで移動してしまう。

「へぇ……リツカ、濡らしてるけど何か変な夢見た?」

「わ、分かってるでしょ、言わないでよ」

「いや? 俺はただリツカが息を荒くしながら寝てるとこしか見てないからね」

「う、嘘つき!」

「はは、確かに俺は大嘘つきだ」

 見たのか見ていないのかは分からない。それでもその部分を直接見られるのは恥ずかしい。暴れてしまおうかと考えたところで、足を押さえられて、シーツも取り除かれた。

「きゃっ……」

「きみは本当にいちいち五月蠅いな」

「だって」

 四日目。生殖器や性感帯には直接触れないまでも、性感を高めるような触りあいをしましょう。そんな決まり事の中、オベロンは太ももに口づけを落としていた。膝に近い位置から始まり、痕をつけながら足の付け根に向かっていく。エッチな夢を見た後だからかもしれないけれど、付け根に到着した後を想像してそこがひくついてしまうのを抑えられない。それを感じたのか彼は笑う。

「昨日調べたんだろう?今日は」

「まだ、でしょ?」

「ああ、そうだな。……それまで我慢できないって?」

「そんなこと、ない」

 ゆっくり、じわじわ。一日目から今日までゆっくりじっくりとじらされるように。今更その盛られた毒に気がつく。一つ一つの行動はそこまで情欲をそそるものでは無かった。それでもこうやってエッチな夢を見てしまうほどにゆっくりと彼の存在を刻みつけられていたのだ。

「俺だって我慢するのはね。それでも、だ。我慢した果てに得られるものがあるんだったら待ってもいいとは思ってるわけだけど?」

「わたしも、がまん、できるもん」

「本当に? 挿れたいとは思わないわけ? こんなにして?」

「おもっては、いるけど……でも、がまん、できっ!」

 付け根に近い部分にキスを落とされる。吐息をかけられる。ひどい、ずるい。そう思っても自慰をすることだって許されていない身体に熱が溜まっていく。

 私だってオベロンに触れたい。そう思って、未だに太ももに触れている彼の左手に手を触れさせる。少しだけびくりとして、それから何? といった声が聞こえた。

「あの、私も、オベロンのこと、気持ちよくしたい。……だめ?」

「……、いいよ。したいんだったらどうぞ?」

「だから、戻ってきて?」

「ああ、わかった」

 で、どうするわけ? そんな言葉が聞こえそうな顔で、こちらの行動を伺う。その瞳すら情欲に濡れているようで、見られるだけでコポリという音を立てて蜜が足の間からこぼれる。これを明日のために我慢するの? と思いつつ、オベロンを見つめ、唇を合わせた。何度も、何度も合わせて、お互いの唇が腫れるほど合わせながら、頬、首、鎖骨、と下へ向かって片手を滑らせる。もう片方の手は翅をいじらないように背骨に沿って撫でつけた。

「っ!」

「これじゃ、だめ?」

「駄目も何も、ヘタクソ。もっと」

「もっと?」

「ぁぁあああ!」

 くそっ! と呟くと、抱き込まれる。お腹に当たっているモノは前に足で触れてしまったときより大きく硬い。興奮してくれているという事実に嬉しくなる。オベロンが、私でこんなふうに。また蜜が溢れて、きゅっと膣内がなにも挿れていないのに切なくひくつく。

 本当は早く欲しい。オベロンだって興奮しきっているそれを無意識にこすりつけようとして、それに自分で気がついて抑えている。今日一日こうやって抱きしめ合って、触り合って、それから。

 日付が変わるまであと何時間なのだろう、それが待ち遠しくてたまらない。  日付変わったところですぐにエッチをするわけでも無いのに、それでも早く、早く、と気持ちが急いでいくのだった。