大量のフラッシュと共に花束を差し出される。それ卯を受け取ってお辞儀を深く行うと、さらにフラッシュが焚かれる。フラッシュの光によってかすみ草の影がちらほらと動く様を見て、私は昔懐かしい光景を思い出していた。
確か小学生の頃だっただろうか。今よりも気温が十度ほど下回っていた夏休みの蒸し暑い日。無邪気で残酷だった自分は、まだかろうじで生きている魚を手ですくってバケツの外へ投げる行動をしていた。びちびちと跳ね、口をはくはくと動かす魚を見て、死ぬとはこういうことなんだと思った翌日。なんと無しに死体の確認をしようと、魚を投げ捨てた藪に足を踏み込む。蚊だかなんだか分からない羽虫が一斉に舞い上がって、それを振り払った先に、それは落ちていた。
真っ黒。一瞬なんだか分からなかった。まさか、たった一晩でかび腐る事なんて無いはず。それだったら、いったい、これは。
よく見ると、それは魚の死骸だけではなく、あたりにも帯のように広がっていた。
蟻だ。まるで川が迫ってくるような勢いで蟻が集まっていた。でも、不思議と嫌悪感は感じなかった。これが、死であり、生きること。
胸の奥がざわざわした。決して怖いわけでもない。ただただ、これが生きることなのだ、これがこの世界というものの縮図なのだ。そう感じていた。
