21、シザンサスを貴女へ
「僕はマスターと踊ることができません」
ダンスホールをバックにした、今日のためにと着飾った姿の彼女の前で答える。ダンスでも踊りませんか、と言う彼女の問いはにこれが適切なのだろうと、彼女へと向かおうとする足を、地面に埋まってしまうのではないかというほど強く踏みしめる。処刑人である自分はこれでいいのだと、目に寂しさを浮かべた彼女を後ろに向かせ、そのまま立ち去った。
「マスター、サンソンさんとは」
「うん。会えたけど、ダメだったよ」
「そ、そうだったのですね。不躾なことを聞いてしまってすいません」
残念そうに眉をハの字にゆがめながらマシュの謝罪を聞きつつ、何故だろうと立香は考える。確かにサンソンは表立って社交の場に行くような性格ではないだろうが、それでもマスターの言葉、もとい、立香の言葉を無碍にするような者ではない。
「あの、先輩」
「ん?どうしたのマシュ。さっきのことは別に気にしていないから」
「いいえ、そういうわけではないのですが。いえ、それもありますが。先輩はサンソンさんのことについて調べたことはありますか?」
「ん?一通り召喚した人たちについては調べられるだけ調べているよ?」
「でしたら、先輩が今悩んでいるかもしれないことに心辺りがあるのですが」
「えっと、それって、サンソンがどうして私と踊ってくれなかったかってこと?」
「はい。先輩は、『処刑人と踊ること』がどういった意味を持つか、ということを調べたことがありますか?」
「それは、たしか」
立香は記憶の片隅を漁る。処刑人と踊ること。処刑人は穢れた存在として忌み嫌われていたことから行われた刑罰。恥辱刑。それを思い出して顔をしかめる。
「確か、恥辱刑としてあったけれど、私は、処刑人としてじゃなくて」
「サンソンさん、個人と踊りたい、ですよね、マスター?」
「うん」
「それでしたら、そう言ってみる方がいいと思いますよ!ファイト、おーです!」
どこで覚えたのだと聞きたくなる掛け声とともに、サンソンさんはさっきこの先にいましたよ、と、シミュレーターで作られた東屋の方を向かわされたのだった。
22、IF:僕の知らない彼女と
「あれは、リツカと……?」
毎日のように押し掛けてきた彼女が家へ来なくなってから数週間。ちょうど学生はテスト前の期間なので彼女もそうなのだろうと思い、多少気になっていたものの、元の生活に戻っただけだと自分を納得させて大学の課題へと打ち込んでいた。その息抜きと買い物へ出かけると、彼女に似ている女性の姿。時刻はちょうど学校が終わったあたりなので彼女なのだろうと当たりをつける。せっかくだからと声をかけようと思ったところで立香以外の男子生徒の影を見つけて、路地裏へと足を向けて冒頭に戻る。
「いやー今日は大変だったね。保健体育とか特に」
「……っすね。でも、リ、フジマルさんは、だいぶ勉強してたってのもあって、今回も自信はあるんっすよね?」
「もちろん!だって私、訳があってどうしても××大学に行きたいんだもん。それより、呼び名!立香でいいって言ってるのに」
「いやいやいやいや、勿体ねぇ言葉っす!」
「もったいなくなんかないってば。ね、ロビン!」
「そこで俺に振りますか?まあ、リツカはフレンドリーすぎるところもありますからね」
「なにそれ~」
そのままワイワイと盛り上がりながら僕のいる路地を通り過ぎる。僕はなぜ隠れているのかと思いつつ、心のどこかにもやもやとした気持ちが浮かんでいた。
23、お風呂
カチカチに固まった体はまるで吹雪のなかに置いてきたよう。それとは正反対に体温より暖かい濁り湯は立香の体をあたためていた。
「リツカ、そろそろこちらを向いてくれませんか?」
「ま、待ってね。もう少し」
存外立香の耳元で、実際にサンソンが体育座り状態で緊張から固まっている立香を後ろから抱き締める状態で湯船に浸かっているのだが、サンソンの声が聞こえ、立香はより肩を震わせる。普段は緊張を解きほぐしてくれる温かなお湯も今は効果がなく、ただただ後ろを振り向くことができずにいた。勿論、サンソンと立香は恋人同士で、抱きしめ合うよりもよっぽど深い関係であった。けれども、頭が快楽でゆだったようなぼんやりとした状態ではない現在、彼の服を脱いだ姿を見ることは始めてであり、濁ったお湯だからといって、彼の姿を見ることも、自分の背中以外を見せることも躊躇と緊張を持っていたのだった。
「リツカ、リツカ」
「ど、どうしたの?」
「その、手に触れても、いいでしょうか」
いつもなら手に触れたいなど言うことが少ないので、どうしたのだろうという思いに、顔を思わずサンソンの方へと少し向ける。
「ああ、やっとこちらを向いてくれましたね。緊張をされているようですし、これではリラックスするために入った意味もないのではないかと」
それでしたら、手でも繋いでしまった方が、まだリラックスできるのではないかと思いまして。そう続けるサンソンに、立香は少し眉をよせた。
「でもそれだと、サンソンがリラックスできないんじゃないかな?」
「……、リツカ?」
「だって、私は気にしないし、手を繋いでくれたら嬉しいって思ってる。でも、サンソンの思っていることも大切にしたいと思ってるんだから。だから、大丈夫。えっと、だから」
だんだんと声が小さくなる。振りかえるにはまだ時間が足りなかったようで、少女は恥ずかしさから、もう一度背中を向けたのだった。
24、召喚記念日(12月14日)
「ど、どうしてこうなったんだろう」
「あいつらに言ったのが運の尽き、だろうな。まあ、こうなったら楽しもうじゃないか、マスター」
「そーでしょうね。……いや、この場合は適任だったかもしれませんよ?」
「あら、そうかしら。私にはそうは見えないけれど」
口々に、あれがいい、これがいいとドレスやらタキシードが出される中、思わず口を突いて出た言葉に、比較的冷静な弓サーヴァント達が答える。その弓サーヴァント達の手にも、似合わないようなレースがふんだんにあしらわれた何かがあるのだけれど、それをなるべく視界に入れないようにしつつ、数時間前を思い出し、藤丸立香はため息をついた。
「あ、あのね、マリーちゃん」
「あら、何かしら?」
「え、えっと、その、サンソンに贈り物がしたいんだけれど、何にしたらいいと思うかな?」
優雅に紅茶を飲みながらマカロンを食べているフランス王妃、マリー・アントワネットに声をかけたのは、カルデアのマスターである藤丸立香。彼女は、見る人が誤って、例えば彼女の恋人である先ほど名前を呼ばれたサンソンなどが見たら、医務室へと彼女を即刻運ぶほどに顔を真っ赤に染めて体を震わせながら声をかけてきていたのだった。
「まあ、贈り物?サンソンに?マスターからだったら、なんでも喜ぶと思うわよ」
かわいそうなほどに緊張して真っ赤になっている彼女のことは、ゆっくりお話を聞いてあげれば収まるでしょうと向かいの席を勧めながら続けるマリーに対し、立香は、そうだから困るんだよ、と言ってそのまま席に座って赤い顔のままため息をつく。
「ここ数か月、ずっと何がいいか考えてるんだけど、何も思い浮かばなくて。それでもう、当日になっちゃって」
つまり、かわいそうなぐらいに真っ赤になっている目の前のマスターは、何か今日に合わせて贈り物をしたいと思っていたけれど、何も決まらずに今日を迎えてしまったのだが、今日という日とサンソンに関係があったかとマリーは首を傾げた。
「マスター一つ聞いていいかしら?」
「なに?」
「今日は彼の誕生日でもなんでもない日よね?日本で恋人に贈り物をするという習慣は、記念日にはあったと思うのだけれど、今日は何かあった日なのかしら?」
「ええっと、その、今日は」
サンソンがカルデアに来てくれた日なのだと、目の前で微笑んでいる王妃に説明をする。サンソンと初めて出会ってから、いままでの旅について、くじけそうになった時にはそっと寄り添ってくれたこと、魔術による回復が効かない私に早く傷が治るようにと祈りをささげてくれたこと、今までの感謝など。沢山のことを王妃と話した。
「そういうことだったのね。それだったら感謝を伝えるのもいいけれど」
「いいけれど?」
「プロポーズをしてしまうのもいいのではないかしら?」
「え、プロポーズ?」
プロポーズっていったい何だっけ?そう考えている立香の前で、どんな場所で告白するのがいいか、プロポーズの言葉はという話や、いつの間にか集まってきた他のサーヴァント達も交えての盛大な勘違いのようなものが始まり、あれよあれよという間に、なぜか音楽祭の時に着ていたドレスを着せられてしまっていた。あのふわふわな結婚式で着るようなドレスやレースはどうなったんだと立香が片隅に思いながら。
「マスタ……、いかがなさいました?!」
シミュレーター内の夜景が美しい公園の一角。黒いコートをいつも通りになびかせながら立っているサンソン。目の前にはいまだにドレスを着たままの藤丸立香。彼女はその姿に驚いているサンソンを前に声を発する。
「今日は、その、ここまで来てくれて、ありがとう」
「ええ。ですが、どうしてこんな時間にそんな恰好で?」
「それは、いつもみたいにみんなが勘違いしちゃって止められなくってさ。でもね、それでも今日、伝えたいことがあって、サンソンにここに来てもらったの」
「伝えたいこと、ですか?」
「うん。あのね、今日って何の日か覚えてるかな?」
「今日は、僕の」
「そう。召喚記念日。私のもとに来てくれた日、だよ。だから、ありがとうって伝えたくて。いつもとなりに一緒にいてくれて、恋人になってくれて、ありがとうって」
緊張で声は震えて、マリーに相談していた時よりも真っ赤になっていたが、藤丸立香は笑顔でサンソンにそういったのだった。
25、素材集め中のこと
「寒い」
再臨素材集めへと雪山へレイシフト。一緒に戦闘に参加したバーサーカーとアサシンたちは、この寒さも関係ないように、目の前に現れた森に次々と姿を消していたのだった。
「確かに、礼装があったとしても、少々寒さを感じるかもしれませんね」
「そうだよね。というか、どうしてカルデアにいたときにはタイツ穿いてたのに、今は生足なんだろう」
考えたらますます寒くなってきた。そういった藤丸立香は、少し赤くなった指先に生暖かな息を吹きかける。何度も、何度も。それでも寒かったのか、先程から隣で話していた、医療班としてついてきていたアサシン、シャルル=アンリ・サンソンへと目を向ける。右手を左手をコートのポケットに入れ、右手で剣を持っている。立香はそのまましばらくサンソンの姿を見ていたが、ふと、彼の後ろ側から抱きついた。
「マスター、どうされました?」
「寒い、からちょっといいかなって」
「今は、敵性生物もいないようですし、少しの間だけですよ」
「ありがとう」
寒いのでしたら、前からの方が良いのでは。そう声をかけるサンソンに、今はこれで良いという気持ちを込めて、立香は抱き締める力を強くする。
「ごめん、でも、大丈夫だから」
「そう、ですか」
音もなく空から降っていた小さな白い塊が、だんだんと強くなってくる風によって痛いほどに体に叩きつけられるようになってくる。
サンソンは、少しでも温かく、彼女が傷つけられることがなければという気持ちから、コートに入ってきた彼女の手を握りしめた。
26、寒い日は
足の先が冷える冷たさに、立香は身を縮こませる。すると、後ろで一緒に寝ていたサンソンの温かな体がモゾモゾと動き、胴に腕をまわすと一緒に、足に足を絡ませてきた。
「マスター、おはようございます」
「おは、よう。サンソン」
「今日は特に予定がなかったはずですが、そろそろ起きられますか?」
「ううん。まだここにいたいかな。それで、……ええと」
「どうされました?」
「シャルルと、いちゃいちゃ、したいです」
ダメかと立香はサンソンに問いかける。朝もまだ早い。それに、今日は1日オフにしていいのだと聞いたのは昨日の夜であった。サンソンには立香のお願いを断る理由もなく、断りたいとも思わず、いいですよ、という声とともに立香を振り向かせたのであった。
27、一緒に入りますか?
「よろしければ、一緒に入りますか?」
一緒に食事を取りますか、と問うように自然に訊かれたためと、情事後の気だるさのため、つい確認もせずに頷いてしまったが、彼は今なんと言っていたのだろうと考える。日本人である自分には考え付かなかったその言葉が、冗談だとも思えずに、もう一度訊いてもいいかなと伺った。しかし、嬉しそうに頬にキスを落としてきた彼に、訊いてはいけないのかと、言葉を一瞬飲み込む。
「サンソン」
「どうされました、リツカ」
恋人としての呼び方に、頬が自然とあつくなるが、それでもちゃんと訊かないと、飲み込んだ言葉を吐き出した。
「えっと、ごめんなさい。さっき、一緒にお風呂に入るって言ったんだよね?」
「ええ。今のリツカを一人で、というのも心配ですし、たまには二人で入るというのもいいのではないかと思いまして」
「確かに、わ、私たち、こ、こ、こいびとどうしだけど」
「一緒に入るのは、嫌でしたか?」
「嫌、ではないし、シャルルには全部、見られているからいいんだけど、でも、恥ずかしくて」
花も恥じらうなんとやら。サンソン以外と付き合ったことがない立香にとって、サンソンか、それとも身近にいる恋人同士としては両親であったか、それとも夫婦のサーヴァントか。立香の両親は勿論だが、立香含めた恋人がいる女子会メンバーの赤裸々事情会という名の悪のり暴露大会でも、恋人同士でお風呂に入ったことを報告するようなことは聞いたことがなかったので、立香としては、それが正しい恋人の形なのだろうか悩ましいところ。そして、情事で裸体を晒すことですら、ぼんやりとした意識のなか恥ずかしいと感じるのに、それもない状態で晒すのはとても耐えられないことであり、ただそれでも。
「それでは、今日はやめておきましょう」
しょんぼりとしたシャルルには勝てずに、否定を否定するために、口を開いてしまうのだった。
28、IF:怪盗サンソンと藤丸立香
「僕は怪盗です。ですが、あなたも怪盗のだったようだ」
「えっと、わたしが?」
「ええ。だって……僕の心を奪っていったのですから」
カット!はいOK!そんな声と共に息をつくサンソンと藤丸立香。サンソンはいつもの外套ではなく、怪盗独特のマントに、帽子をかぶり、仮面をつけた姿であった。対する藤丸立香は、あまり裕福ではないものの、貴族の令嬢であるというような、フリルの軽くあしらわれたドレスを着ている。そんな二人が主演の映画もあと少しで完成というところに迫っていた。
「お疲れ様、サンソン」
「ええ、お疲れ様です。リツカ」
休憩にと差し出したポカレスエットを受け取りつつ、いつの間にか用意したホットチョコを取り出すサンソンに、わぁ!と喜びの表情で受けとる立香。そんな二人の姿に現場はほんわかとしたムードになっていく。
今回の映画は、かの天才と名前を同じにしたダヴィンチ監督が手掛けたものであった。愛を知らない怪盗が、とある侯爵の依頼で宝石を盗むことになるというところから始まる物語である。盗むこと事態には成功し、報酬を貰って去るだけであったが、屋敷から出るところで、一人の少女と出くわす。彼女が、盗んだ宝石を受けとることになる、侯爵の婚約者となっていた藤丸立香ご令嬢であったが、怪盗サンソンに一目惚れをしてしまい、サンソンも心を奪われてしまうというものである。
クライマックスは、立香が自分を拐ってほしいとサンソンにお願いをして、サンソンは勿論とかえす、というものであったが、立香はその際に演技とはいえキスシーンがあることに内心、穏やかではなかった。ダヴィンチからは「気軽に、気軽に」と言われているものの、女優としてもなかなか花開かず、ようやく手にした主演であること、それから年若い藤丸立香にとってのファーストキスになることからも考えて、緊張が高まっていたのだった。
「立香、ホットチョコは美味しくなかったかな?」
「ううん、そんなことないよ。ただ……」
「緊張している、ですか?」
「うん。よくわかったね」
「ええ、まあ。あなたはいい意味でとても分かりやすいですからね」
「えっと、それって原因とかもってこと?」
「ええ。僕だってそれなりに緊張はしていますから」
柔らかな微笑みに、立香はかっこいいなと思いつつ、本当に緊張をしているのかと、そんな意味を込めた視線で見る。サンソンは小さく息を吐いてから、本当に緊張しているのですよ、とペットボトルに一度口をつけて小さく手招きをする。立香が手招きのままに彼についていくと、舞台袖の死角になっている場所で、マントにくるまれるように抱きしめられる。
「わ、えっ、ちょっと……?」
「劇の練習です。……、だって僕の心を奪っていったのですから」
「ええっと、……私が、あなたの心を?」
「ええ」
「で、でも……って、近い近い!台本にもそんなに近いなんて書いてなかったでしょ!」
「そうでしたでしょうか?」
「そう、だよ!でも、せっかくだから、このまま続きね。……それだったら、奪ったあなたの心ごと、あなたの元へ私を連れ去って?」
「ええ……いいでしょう」
近づけられる顔に思わず目を閉じる立香。果たして死角でそれからも演技が続いたのか。それは二人だけの秘密である。
29、IF:怪盗サンソンと藤丸立香2
「仕事で少々露出するのと、プライベートで、こうやって好きなようにあなたを愛せるのは違うでしょう?」
映画撮影中に告白されて付き合うことになったわけだけれど、作中の私と彼とは違って、二人とも大人なわけで。使った衣装はそのままプレゼントだ、と渡されたそれは、少々の興奮材料に。お互いにそれを着て見せあったのが数刻前。映画撮影のノリで台詞を言い合ったりしていたのがほんの少し。そして、抱き合うシーンを真似するようにベッドに沈んだのは数秒前だったか。
目の前の怪盗衣装の男、問いかけてくるサンソンは映画でみたよりも理性が溶けきったような瞳で見つめてくる。私は肩の力を抜くことを答えとしたのだった。
30、IF:怪盗サンソンと藤丸立香3
「先のことは全然わからないけど、今は幸せだよ」
だから私を連れて行って。そう言いながら腰に腕を回してくるのは、他の女性にされるのと同じなのに、どうしてか彼女の望む通りに行動したくなる。未熟さとは反対な、蠱惑的な声にくらくらとしながらも、なんとか理性で本能を抑え込みつつ、潜むような声で彼女にこうきくのであった。
「リツカ、あなたは僕の正体をご存じで?」
「もちろん。サンソン、あなたは怪盗なんでしょう?
「ええ、そうです。貴族から金を盗み、不幸なほど税を徴収されている村人たちに分けられたことも、誰かから依頼されて貴重なものを盗んでいたこともあります。ただ、今しがた、僕は今まで目にしたこともないようなお宝を見つけまして」
それはあなたですよ。そう言い、彼女の望み通りに抱き上げ、懐に入れた金貨のことなど考えず塔から飛び降りたのだった。
