SSまとめ - 3/6

お誘い

「シャルルは、その、抱きたいとか思わないの?」

「それは。抱きたいか抱きたくないのかと問われましたら、勿論あなたの事を愛したいと思っていますよ。ですが、それと同じぐらいにはあなたの事を大切にしたいとも思っています」

 恒例となっていたベッドの上での軽い口づけ。決して男女間の秘め事を行う雰囲気ではないそれの後の言葉に、サンソンは目を丸くする。サンソンとしては、今すぐ愛を語り、抱き潰すほどに立香の愛したいと思っている。しかし、生前に抱いたこともない成長真只中にある身体に、今すぐ手を出さなくても、ゆっくりと事を進めていくのも良いのではないかと思っていたのだ。

「シャルルの気持ちはわかってるつもりだけど、そんなに柔じゃないし、シャルルとのキスは、気持ちいいけど、もっと、シャルロのこといっぱい、感じたいな、なんて」

「リツカ。それは」

「っ、ごめんね。シャルロのこと、困らせちゃった」

 口付けをした際に握っていた彼の服の裾を手放す。常であればサンソンは引き下がるかもしれないが、立香の瞳はどこか寂しそうで、それに抗えずに手放した手を逆に掴み、押し倒す形となる。

「シャルロ?」

「リツカ、あなたが望むのであれば僕も。しかし、先程も申し上げたとおり心配なのです。ですから、少しずつ」

 言いながら首もとのボタンを外し、服を肌蹴させ、口づけをした後、首もとに顔を埋める。そのまま肩先に噛みついて、痛みを感じない程度に歯を何度もたてる。

「ん、んぁ……サンソン」

「シャルロ、と。リツカ、あなたは何よりも可愛らしいですね」

「やだ、恥ずかしい」

「逃げないでください」

 噛みつくたびに身動いていたが、恥ずかしさからか手足をバタバタとさせはじめる。サンソンはそんな立香の首もとから口を離し、顔を覗きこみながら苦笑する。

「マスター、恥ずかしいですか」

「う、うん。えっと、シャルロ」

「ええ。僕ですよ、マスター。マスターはこれよりも深い関係を望んでいらっしゃるのに、初な方だ」

「う、それは、その、シャルロみたいな恋人、できるの、初めてだし。でも、シャルロが欲しいと思うなら」

「僕に抱かれてもいい、と。ええ、その気持ちは嬉しいですが、まだマスターには早いでしょう。 僕を誘ったりせず、貴女はあたたかくして寝てくださいね。では、いい夢を」

待って、シャルロ。立香の声にサンソンは答えずに部屋を後にした。