2、休眠
戦闘訓練も座学もない日がたまにある。そんな日はゆっくり過ごすのも良いけれど、本を読んだり、シミュレーターを使って良いのであればそこでお茶会を開いたり、そんなことをして一日を過ごすのもいいなと思っている。
「あのさ、きみって暇なわけ?」
「うーん、今に限って言えば暇かな」
眠った先で出会ったのはオベロン。彼は炎で消え去ったはずのウェールズの森で優雅に過ごしていた。隠密行動用とした白が基調な姿をしているけれど、そんな姿で森にいたら汚れないだろうかとと思う。少なくても食事にカレーうどんは食べられないな、だなんてどうしようもないことを考えながらも彼が腰掛けている切り株の反対側に座った。
オベロンはどんなに小さなものであっても、呪いと性格から素直にはなれないんだろうけれど、とにかくひとや物を大切にはしてくれるひとだ。そんな人のことだからこの森でも何をしていたのかは分かる。今でもあの森で過ごしていたことを大切に思い、そうしてその再現をしていたのか、それともそこですごしていたのであろうものの幻影と語らっていたのだろう。
全く素直じゃない。どこかの音楽家のような言葉を思い浮かべて苦笑して、そうして背の温もりに体重を預けた。
「うわっ、急に何するんだよ」
「何って、切り株とオベロンに寄っかかってるだけだけど」
「だから、何で俺に寄っかかってきたのかって聞いてるんだけど?」
「別に? 特に理由なんてないけど」
理由なんてない。それは本当のこと。あえてあげるとすれば、オベロンがオベロンらしくて、それが嬉しくてつい。そんな言葉しか浮かばない。
弱きもの、いるだけで害になるもの。そんなものたちが集まった小さな森。そんな場所を大切にしている王様。
胸がきゅっと、何故か締め付けられるように痛んだように感じて手を持って行く。痛い。でもこれは心地の良いような痛みで、ますます甘えるようにオベロンの背に自重をかけて目を閉じた。森の香りにオベロンの香り。それからマント越しに感じる彼の体温に、閉じた目が重くなる。
体重をかけられた彼はため息を一つつくけれど、それでも夢の中で眠りに落ち始めている私を受け入れてくれたのだった。