9、少女は卒業
「きみ、まだ未成年だろ?」
「あれ、言って無かったっけ? もう二十歳は超えてるよ?」
「は?」
仕事終わりのマイルーム。なんとなしにオベロンの膝の上に乗りながら、お風呂あがりのお酒に口をつけようとしたときに聞かれた言葉。やめろと言いつつなんだかんだ言って世話を焼いてくれるオベロンが、ドライヤーで髪を乾かそうとしながらも不思議そうに聞いてきたのだった。
確かにカルデアに来たばかりの頃はまだ未成年であったし、自分で言うのは恥ずかしいけれど、少女と呼ばれる年ごろでもあったと思う。しかしそれも何年も前。特異点修復だけでは無く空想樹切除も六つを過ぎ、そこまで進んでいたら成人だってとっくに迎えていた。
「それは、聞いてないんだけど」
「言ってないし、それからなんだっけ。海外勢から見たら日本人ってベビーフェイス、っていうんだっけ? 結構幼く見られるらしいよね」
私から見たらオベロンの方が年上に見えるけど、それでも私より発生年代的に考えたら年下なんだよね。そんなところを不思議に思う。年下に見えるマスターと年上に見えるサーヴァント。勿論サーヴァントの方が年代など関係なく聖杯から知識を得ることができるから年齢を基にした経験より知識を積めるわけだけれど、それでもどこか不思議な感じはしていた。
「ああ、そうだね。きみは確かに幼く見えるところはあるだろうさ」
「なんか言い方がとげとげしいけど、やっぱり子供っぽく見えるの? 一応区分的には大人だと思うんだけど」
「きみが大人? 冗談はやめて欲しいな。せいぜい小学生に毛が生えてるようなものだろ」
「流石にそれは酷いとお……ッ」
振り返ったままの姿勢で濡れた髪の毛に触れられ、そのまま後頭部を押さえつけられる。えっと思うまもなく口づけられ、そのまま深いキスになる。
「っ……!!っっ……、っ……!!!」
「……、なんだよ、きみが自分から言ってきたんだろ?」
もう大人だって。それだったらこれぐらいはできるだろ。
息を荒げて目の前のオベロンを睨む。全く、もう。素直じゃ無いだけならまだしも、こうして時々よく分からない理論でキスをしてきたり、求められたりするのは嫌では無いけれど、それでも突然は驚くのだ。
反論を考えるも、それよりも口がうまい彼にこれ以上言ったらどうなってしまうのか考える。それを視られてさらに深い笑みを浮かべられるのだった。