【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(11~20) - 1/10

甘いお菓子

「トリックオアトリート!」

「はい、お菓子だよ。マスター」

語尾にハートがつきそうな甘ったるい声と、それと同じような甘さを煮詰めたお菓子。

ちょうど自分の部屋に入ったところでオベロンがベッドに潜り込もうとしていたので、トリックオアトリートとふざけていってみると渡されるお菓子。彼が持っていたことが意外で、思わずそれを蛍光灯の明かりに照らしてみたのだった。

「何やってるわけ?」

「何って……光に透けるかなって?」

渡されたのはべっこう飴のような色のキャンディー。ホワイトデーに渡されたものによく似ているそれだけれど、今回はより濃い色をしていた。

「今回はきみのところで言うべっこう飴、だったかな? 俺の手作りだ。喜んで受け取ってくれよ、マスター」

「ありがたいって思ってるって。それにしてもハロウィンみたいな行事に参加するのは意外だなとは思ってるけどね」

「ああ、それね。童話の女の子とか、アルトリアが俺のところに来てね。参加しないと酷い呪いをかけるぞって」

童話の女の子と言えばナーサリーだろう。ハロウィンと言えばエリザベートだけれど、そのことを抜いても子供の姿をしたサーヴァント達は行事ごとにそれを楽しんでいたことを思い出す。今回もきっと楽しんで皆に声をかけているのだろう。そうして、アルトリア……アルトリア・キャスターはこちらに来て初めてのハロウィンを楽しみたい、と言うところかな。マーリン魔術を教えてくれたお礼にかもしれないけれど、はしゃいでいるのは確かだなあ、と自分も楽しくなりつつ、オベロンの心情もどことなく分かっていたので、口を開いた。

「それは、ゴメン」

「全くだ。せっかくマスターの部屋で寝ようと思ったのに、それのせいで全然寝られやしない」

「さりげなく寝ないで? じゃなくて、参加してくれてありがとう、だよね」

「ああ。それで……マスターは無理矢理参加させられたサーヴァントに対して、何もしないなんてことは無いよね?」

「なんかそれ言われるとしたくなくなるんだけど。でも、そうだね。私に叶えられることなら……例えば、今寝ようとしてるなら膝枕とかどうでしょう?」

「は? それなんの罰ゲームだよ」

「えー。罰ゲームでは無いよ? 清姫ちゃんとか、静謐ちゃんとか、他の子達にも人気あるんだから」

「……」

あきれた目で見られるついでに、何処の風俗だよと言うような貶んだ目で見られる。別にそういう意味じゃ無く、ただのじゃれ合いの一環だけれど……考えれば考えるほど、どこかおかしいのかなという感覚になり、だんだんと恥ずかしさが大きくなっていく。そうしてそれと一緒に顔が赤くなっていった。

「今更気がついたのかよ」

「うん。最近もしかしたら距離感とかおかしくなってたかも」

「かもじゃ無くて、おかしい、だろ。まあいい。今のマスターにこれ以上代案を考えさせてもおかしいことが浮かぶだけだろうからな」

「うう、面目ない」

「そう思うんだったら、少し自分のこと考えたら?」

私の肩をがっしりと掴んで、近づいてくるオベロン。近い近い。そう思いながらも思わず目を瞑ると、そのまま口づけをされ、離される。

「ほら、こんなことしても自分の身一つ守らないんだろ? それは流石にどうかと思うんだけど」

じゃあ、俺は寝るから。グッバイ、マスター。

オベロンはベッドに潜り込み、今度こそ何も話はしないと言うように、しっかりと顔まで上掛けを被る。私はそんな様子をしばし呆然と見つめたあと、耳まで熱を上げならがらも、上掛けを彼から奪い返すように引っ張り始めるのだった。