20、ぬくもり
一緒に過ごす。手を繋ぐ。抱きしめる。そんなことだけでも幸せに感じることができるって幸せだと思うし、こんな些細なことだってありがたいことなんだって改めて思うのだ。
「きみを含めて人間って単純すぎないかな?」
「そう?」
「ああ、こうやって一緒にいるだけで……幸せってやつを感じられるんだろ?」
「そうだね、それを考えたら単純かも。でも、こうやって幸せを感じられる感性を私は大事にしたいなって思うよ」
「理解できないな」
「まあ、オベロンはそうだよね」
私の部屋でただなんとなくゴロゴロとしている。本を読むわけでもなく、ベッドサイドにあるモニターで映画を見るわけでもない。ただ二人でスナックを食べつつ、時折手を絡めたり、足を絡めたり。本当に意味の無い触れ合いをしているのであった。
「大体俺と付き合いたいとか理解できないんだけど」
「うーん、私もよく分からないな」
「おい」
「うそうそ、好きだからだよ。一緒にいたいから。これじゃダメ?」
「それってきみが友達に対してしていることと何が違うんだよ」
ごろんと背中を向けられる。ついでとばかりにトンボのような薄い翅がバサバサと顔に当たった。くすぐったい。それでもオベロンが拗ねているように感じてしまって、つい笑みがこぼれる。もしかしたらオベロンが拗ねているように見えるのすら私の幻覚かもしれないけれど、それでもちょっとだけ可愛く思えて、その背中にピタリと張り付くようにくっついて腕をまわした。
「おい、やめろ」
「え、いいじゃん。拗ねたオベロンくんには、これぐらいの刺激がちょうど良いんじゃないかなって思ったんだけど?……友達も確かに距離が近かったりするけど、こうやって抱きしめたり、あとはキスしたり……温もりを伝えたいって思うのはオベロンだけなんだけど?」
「……、はぁ。わかった。きみにとっての友人と恋人っていうのは分かったさ。あいにく俺にはどっちも縁がないものだけどな」
「縁が無いって、私に告白してきたのも、今付き合ってるのもオベロンじゃん」
その言葉にオベロンは私を睨むように振り返る。けれど、オベロンが不機嫌なことも、睨んでくるのもよくあることなので気にはならない。むしろごろごろとしすぎたせいなのか、それとも抱きついた背中から伝わる体温のせいなのか、ふぁっ、とあくびが出た。
ああ、眠いなぁ。でもまだ起きていたいな。
「リツカ?」
「んっ、ごめん。あくびが」
「……」
オベロンは私の手を離れてもう一度ごろんと寝返りをうつ。そうして向かい合うようになって、お互いの瞳をのぞき込む。
ゆらゆらと揺れるように目の前の光景が揺れているのはあくびのせい。それでも綺麗な青が目の前にあって、きれいだなあと思った。
「眠いなら寝れば良いだろ」
「でも」
「ほら、寝ないんだったら俺が永久睡眠かけてやろうか?」
「寝させていただきます」
ちょっと残念と思いながら目を閉じる。暗闇の中、それでも起きたら綺麗な青がまた広がっているんだろうなと思い、楽しみになったのだった。