24、そうすれば嫌でも着れないだろ
「これは……」
似合わない。絶対似合わないって。そう言いたくても言う相手はおらず。
やっとできたんだから持って行ってくれたまえ。綺麗な笑顔でそういったダヴィンチちゃんを思い出す。こんなものを作るだなんて、とあきれたくなると共に、ハベトロットやクレーンさん達と一緒に考えながら作ってくれたのだとは分かっていた。
目の前にあるのはセーラー服。紺色のそれに、特徴的な赤いリボン。胸元は綺麗に開いているところがまた恥ずかしさを増長させる。これを着て後で記念撮影ね。そう言われた気もするけど、気のせいだったら良いな。ため息をつこうとしたところに彼がやってきたのだった。
「今日もいい顔してるじゃないか、マスター」
「そんなに変な顔してたかな。それよりオベロン、これ」
「何? って本当になんだよ、それ」
私が制服を指さすと、一目見た後にうげっ、と顔をしかめる。流石にそこまで酷いものではないだろうけれど、私が着たところを想像してそんな顔をしたなら分かると頷きたくなった。
「きみ、今度はそれを着るのかい?」
「うん、一応着たら写真も撮るらしいんだけど」
「聖杯からの知識でどんなものかは分かったけど、きみってそんな年齢じゃないだろ?」
「それはそうだけど、気を遣ったんじゃないかな?」
「気を遣うだって? マジかよ」
気を遣うんだったらもっと他に方法があるんじゃないか? そういうオベロンは少しだけ不機嫌だ。理由は私がまた消費者になっているように見えるからとかだろうけど、それは気にしていないんだよね、なんて思っていると、声をかけられる。
「きみはそれ、着たいわけ?」
「うーん、着たいか着たくないかで言ったら、正直言うと今更感はあるけど」
「だったら着れないようにしてやろうか?」
「着れないようにって?」
無言。そうしてオベロンがそのまま近づいてくる。そんなに近づいてきたらぶつかっちゃうよ。思わず目を瞑ると、首筋がぶりと噛みつかれたのだった。