32、夢ですら会いたい
好きで、好きで、好きで。そうで仕方が無い自分と、それを許さないで止めようとする自分。心を透明にしないといけないと思っているのに、それでも思いは湧き上がる。
会いたくて、他のひと達と話しているだけで嫉妬してしまいそうな気がして、苦しくて。そんな思いは心を満たしていき、ついには夢の中まで彼が現れるようになった。
「うわっ、キモ!」
「オベロン! また会えたね!」
いつかの再現かのような台詞を忌々しげに吐き出した彼に嬉しくなる。そんな言葉で嬉しくなるとかお前はドMか? なんて、どこかの作家の言葉が聞こえてきそうだけれど、それは彼限定なのだ。
「またって、寝る前も近くにいただろ」
「そうだけど、こんなところでも会えるなんてうれしいから」
「はあ? なにそれ、笑えない冗談やめてくれるかな?」
「冗談じゃないよ」
「……」
まったく気持ち悪いしめんどくさい。顔に書いてある気がするけれど、それだって嬉しい。
そう。藤丸立香はオベロンに向けられる者であればなんだって、それこそ嫌悪の感情だって喜びの感情を得るようになってしまったのだった。