【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(31~40) - 3/10

33、嗅ぐ

サーヴァントの中には香水をつけている者や、香を纏っている者、インクの匂いが染みついた者、その他にも沢山の者がいる。それだったら、いつも私の部屋でゴロゴロとしているこれからはどんな香りが漂ってくるのか。それが気になり、シャワーを使っている好きを突いて、彼のシャツに手を伸ばした。

 

「うわっ、本当に何してるわけ?」

「お、お、お、オベロン?!」

嘘だと思いたい。いつもだったらシャワーだけだとしても三十分は使用しているのに。

一緒に入ったときには烏の行水のようにシャワーを浴びてそそくさと出て行こうとした私の手を引き、マッサージ含めてじっくりと細部まで洗ってきたオベロンだ。そんな彼であったのなら、自分の身体も隅々まで洗い尽くして三十分以上。それほどまでに時間がかかるのをいつも計っていると言ってしまえば自分は変態かもしれないけれど、今はそれ以上に変態と思われる行動を取っていたのだった。

くんかくんか。

妖精王の姿をしていた彼に珍しいと思いつつ、私がいるのに全く気にせずに脱いでシャワーを浴びに行く姿に呆れる。けれどすぐに『妖精王の姿をしているときはどんな香りを纏っているのだろう』と思い、彼の服の香りを嗅いでしまっていたのだった。

結論から言うと、彼の服の香りは森の中のような香りであった。そこにオベロン自身の香りも混じり、好ましい香りとなっている。ヴォーティガーンを全面に押し出しているときの姿とは少しだけ香りが異なっているようにも感じた。

「で、きみは僕の服の香りを嗅いで、何がしたかったの? 嗅ぐこと自体が目的だとか、気持ちの悪いことは言わないで欲しいなあ?」

「ぐっ……嗅ぐこと自体が目的でした。良い香りでした。ありがとうございます」

「……、きみってば、常々おかしいやつだとは思ってたけど、そこまで脳みそ腐ってたわけ? 流石の俺でも本気で気持ちが悪いんだけど」

「ってことは、いつもは気持ち悪くないと?」

「平等に気持ち悪いけど、きみの行動は群を抜いて気持ちが悪いって言ってるんだよ! そんなことも分からないとは言わせないからな」

ああもう、と叫ぶように声を発するオベロン。そんな彼を見つつ、考える。本音を言えない彼なんだから、きっとこれも本音ではないのだろう。そんな考えを理解したらきっと「違う!」と言いそうだなあと思いつつ、それでも彼と話すことができる、構ってもらえる。がどことなく嬉しくて。

昨日だって、今日だって、明日だって。変なことをして構ってもらうのであった。