46、頬を膨らませる
「やっぱり可愛い~」
「きみってば、本当に頭どうにかしてるわけ?」
「そんなことないよ。オベロンくん、次はこれ着ようか」
出される服はフリルがたっぷりついたロリータな服装。
一応オベロンの名誉のために言っておくが、今は立香と同じ人間のサイズではなく、小さくてかわいらしい妖精達と同じサイズになっている。人間サイズであったならすでに立香の尻に蹴りをお見舞いしているところかもしれないと思いつつも、ミスクレーンとハベトロットが作り上げた、繊細で凝った作りの衣装を前に、どうしてやろうかと考えるのであった。
「やっぱりオベロンには、可愛いの、似合うよね」
「……」
「怒ってる? かわいいなぁ」
「……」
怒っているのか。当たり前だ。確かにかわいらしいと言われたこともあるけれど、それでもこんな服を着せられるのは大変不服だ。ただ、それでも。目の前で瞳の中にハートマークを浮かべているように見えるマスターに何をしても無駄であることは分かっていた。
「黙ってるオベロンも可愛いよ」
「きみさ。ぼくが男だっていうの、分かってるよね?」
「うん?分かってるよ。でも似合うんだから仕方ないよね?」
仕方ないわけあるか。そんな声だってきっと聞こえないのだろう。そんなオベロンにできることはただ一つ。頬をぷっくらと膨らませ、立香をかわいさで昏倒させることであった。