【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(51~60) - 2/10

52、童話の王子様にはなれないけれど

「オベロンって本当に王子様だよね」

「なんだよ、藪から棒に」

藪からスティック。そんな言葉が一瞬浮かんだけれど、それはきっと昼間にみんなで集まって見ていたテレビのせいなんだろうと、オベロンは結論づける。全く、喜劇の王様を捕まえておいて、何が本物の王子様だ。それこそ廊下を歩けばそこら中に王様や王妃様なんているだろう。

オベロンは王さまだと言っても、純粋なものではない。オベロン・ヴォーティガーン。所詮オベロンはまがい物である。被りものである。自分がそんなことを一番理解している。ついそんなところまで考えが進み、それを打ち消すために舌打ちをした。

「どうしたの、オベロン? 不機嫌だね?」

「まったく、誰のせいだと……それより、きみのやるべきことをやらなくても良いのかい?」

「げっ……ありがとう」

時刻は午後九時。本日の日報を書いていた立香。途中に急に冒頭のようなことを話し始めて、短時間で完璧に自分のしていたことを忘れていたのだった。デジタル媒体に、それ用のペンを走らせる。今日のそれは文字を打つだけではなく、どうやら図式で説明することも必要だったようだ。いつかの夏の狂ったイベントで同人誌作成の手伝いもしていた立香だったので、少しだけ眉を寄せながらも書き進めて行っている。

別にしっかり課題をクリアしようとしているなら自分はここにいなくても良いだろう。そもそも、ここに自分がいたところで、またはいなかったところで、立香が日課の課題提出を怠ったとしても自分には関係ないことだ。そうであったとしても。

オベロンは童話の王子様ではない。ましてやマスターに協力的なサーヴァントでもない。それでも、ただなんとなくだとしても。それを他の者が知ったら『心地よい』という感情じゃないの? と思うようななんとも言えない気持ちを感じながら、オベロンと立香は一緒の部屋に、ただ一緒にいるのであった。