【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(51~60) - 8/10

58、やさしさ

君は人一倍優しい王子様。きっとそうなんだろうと思っている。

秋も過ぎ去ったと言うより、最初からそんな季節があったのかさえ分からないロシア異聞帯の残り香。吹雪が吹き荒れる大地で今日も今日とて狩りを続ける。羽虫類に近いそれの毒の篭もった刃を避けつつ、サーヴァント達は次々に敵を倒していくけれど、私の横にはいくつもの翅を纏ったサーヴァントが立っていた。

「マスター、そろそろ終わりだ」

「うん、護衛ありがとう」

ブリテン異聞帯を攻略した後、召喚室へ急いだことを思い出す。そこに現れたのは、異聞帯で一緒に旅をしたオベロン。奈落の虫の姿ではなかったものの、すぐに再臨を果たして、その姿へとなったのであった。

彼が戦闘に参加すれば、彼の援護もあり、すぐにでも決着がつくだろう。それでもそれをしないのは、彼が離れてしまえば私が無茶をすることが分かっているからだろう。無茶をするな。何度言われて、できなかったことだろうか。自分自身が犠牲になればいいなんてことを考えてはいないけれど、苦しんでいる人、庇わなければ怪我をしてしまうその状況、それらから少しでも遠ざけるため。そんなことを考えて、いや、考える前に行動してしまうのだった。きっと、それを分かっている。

どうしようもなく他人に献身してしまうこと、自分のことを大切にしていないわけではないけれど、それでも他人のことを考えてしまうこと。それを分かってくれているから、こうやって今だって隣にいてくれるのだろう。

優しいな。

こんなことを思ってしまったら、口に出してしまったら、きっとオベロンは眉をひそめて嫌がるだろう。でも、それが分かっていたとしても、それでも私の口からはついその言葉がこぼれてしまうのだった。