【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(71~80) - 4/10

74、妖精

妖精と言ったらどんなイメージを持つだろう。美しい翅を持っている。かわいらしい生き物。人間に害なんか与えない、優しい生き物。そんなイメージかなと思うけれど、私の目の前にいる生き物はそんな妖精のイメージを崩すものであった。

「きみの住んでる国の妖精のイメージってなんなの?」

「なんなの? って何、オベロン」

「いや、日本と他の国とのイメージの乖離が激しすぎるだろ」

「そうなの?」

今日も今日とてだらだらと私のベッドに寝転がって場所を占領するオベロン。一応妖精王であり、妖精の一種である。かわいらしいかと言われたらそんなことはなく、身長だって某アニメーションに出てくるような小ささではない。せめてちびオベロンだったらイメージに少しは合うんだろうなと、そんなことを思う。一応小さくなることはできるけど、アニメーションの方の子にあんな重量は無いだろう。どっちにしても私の持っていた妖精のイメージとはかけ離れていた。

「食べ物に執着する、カメラを持ち歩いている、その他にも勤勉である。日本人について書かれた文学作品も結構偏っているとは思うけど、日本のこのイメージはどこから来たんだろうなって思ったわけだ」

「そのイメージ、だいぶ偏ってるかそれとも昔のイメージがこびりついている気がするけど……確かに、妖精國の妖精達とはずいぶんイメージが違うよね」

「だろ?」

「まあ、昔から日本人のステレオタイプだと、八百万の神様を身近に感じてたからね。付喪神? みたいな神様もいるぐらいだし。だから、妖精も神様と同じように身近であって、それでいて仲良くできるようなイメージがあったんじゃないかな?」

「安直だな」

「安直ってねえ。まあ確かになんにでも神様とか言っちゃうところはよく分からないところもあるけど……それより、どうしてこんな話を?」

「いや、あまりに妖精のイメージが乖離しすぎていたからね。マスターに危機感を植え付けておいた方が良いかと思って。妖精は、そんなに優しいもんじゃあないし、そもそも周りに偶然助けられてきたけれど、そいつらだってそんなに良いやつばかりじゃない」

「うん。それは分かってるよ」

「だったら」

「でも、優しい人に助けられた。生きようと思った。先へ進みたいと思った。それは変わらないかな」

妖精だって、人間だって、神様だって。冬木から始まった旅の中で色々なものに出会ってきた。人間でないもののほうが多かった気がするけれど、そういったものたちに助けられてきた。それを信用するなというのは無理があるのだった。

「はあ。まったくこれだから。きみは本当に底なしの善人だよな」

「えへへ、それほどでも」

「褒めてない」

「そうなの?」

「……」

オベロンは黙ってしまう。それは言葉が歪んでしまうからか、それとも返す言葉がなかったからだろうか。まあ、それでもいいけれど。

私は黙ってしまったオベロンの方を向くと、いたずらに笑って彼を怒らせようとするのであった。