【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(81~90) - 3/10

83、綺麗なきみ

「オベロン~!」
間延びされた己が名前にオベロンは眉をひそめる。どうしてこんなことになっている。ボーダーから奈落のありもしない底へと向かって落ちていき、それから召喚されて、今は夏。猪の氏族から借りたパーカーを羽織り、これだったら泳がなくても済みそうだとあくびをしながらパラソルの下に入ったのは数刻前であった。
かつてあんなに傷つきながらも己が最後まで歩んできた少女、それから人類最後のマスターとしていくつもの異聞帯を否定してきた少女がにこやかに遊んでいる。これを他のものが見たら幸せな空間と言うのかもしれないけれど、あいにくオベロンには幸せという言葉が浮かばなかったのであった。
幸せを感じることができない、いとも簡単に幸せを感じているものたちに嫌悪感を感じる。それはオベロンの在り方である。別にそれがうらやましいと言うわけではないけれど、それでも基本的な考えの中にある、奈落へ全てを、という考えは変わらない。
気紛れに見えた空へと手を伸ばし、召喚される。そんなことがあってたまるかと思っていたけれど、召喚されたものは仕方が無い。諦めの悪い、強情なきみ。そんな立香だったから今度は隣に立とうと思ったのだった。
「オベロン、早く来てってば」
「なんだい、君たちは」
「おっきい鳥が出たんだってば」
「それを早く言ってくれないかい?」
キラキラとビーチサイドは輝く。そんな中で笑いながらもこちらへかけてくる立香はあまりに綺麗で……。続けて口に出そうとした言葉すら忘れてしまったのだった。