【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(81~90) - 4/10

84、頼りになるもの

「うわ。キモッ」
「ありがとう、嬉しいよクソヤロウ!」
「マジかよ!イヤがらせばっかり上手くなってんじゃねえか、おまえ!?」
お世辞にも綺麗だとは言えないところはある。けれどそれでも王子様として一応は気を遣っているようで、蝶の翅の姿の時には決して言わないその言葉。けれど、そんな言葉使いをする彼に親近感が湧いてしまう。
「頼れる仲間がひとりもいなくなったら、ため息交じりに呼んでくれたまえ!」
彼にバレンタインチョコを渡した後に言われた言葉。この意味は分からないけれど、それでもその言葉を頼りにしてしまいたくなった。

「……っ!」
次は躱せない。
何本かの髪の毛が舞う中、サーヴァントの召喚を試みようとする。今回の戦闘は今まで行ってきた聖杯戦線と同じような戦い方になりそうだと思った。次から次へと現れるサーヴァント達の攻撃を躱しながら、召喚を試みる。けれど詠唱の途中でまた攻撃。途切れた詠唱に反応するものはなく、プトレマイオスが一緒に戦ってくれているからかろうじで保っている状態。そこでふと、彼に言われた言葉を思い出したのだった。
「おべろん」
小さく名前を口にする。詠唱すらしていない状態で来るなんて思っていない。それでも、もう一度。今度は声を張り上げてオベロンの名前を叫んだ。
「来い、私のオベロン!」
攻撃の手が止む。どうして止んでいるのかなんて目の前の光景で分かっていた。
巨大な鎌で一斉に駆られた首。残った敵は蹴り飛ばされ、遙か後方へと飛んでいった。そうして巨大なダンゴムシがローラーとなって残ったものを潰していく。気づけば敵は跡形もなくいなくなっていた。
「きみさ」
「どうしたの、オベロン?」
「どうして俺の名前を呼んだわけ?」
「えっと、」
頼れる仲間がひとりもいなくなったら。この言葉を再度思い出すも、これを言ってはいけない。きっと彼が言ってくれた数少ない本音の一つなのだ。隠しておくべき事項だと思い、口を開いた。
「なんとなく?」
「……なんとなくってね、気安く呼ばないでくれるかな?」
「ごめんって」
「まあ、終わったことは仕方ないけどさ。次は無いと思ってくれる?」
嘘をついたことを分かったような顔。それでいて、触れないでくれる優しさに思わず笑顔になる。オベロン自身もきっと触れたくないことなのかもしれないけれど、それでもあんなにも小さな約束を守ってくれたことに嬉しくなった。
大嘘つきの君が守ってくれた、小さな約束。
最後だなんて言いつつ、これからも呼べばきっと来てくれるだろう。そんなわかりきったことを思いつつ、新たに現れた敵に右手を向け、詠唱を始めたのだった。