【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(81~90) - 8/10

88、優しい君

きっとそれはとても悲しいことなのかもしれないし、本人からしたら忘れたいことなのかもしれない。私だって経験したらそうなるだろう。
「きみってさ、危機感なさ過ぎじゃない?」
「ん? どうしたの、藪から棒に」
突然の話題にどうしたのかと後ろを振り向く。視線の先のベッドでは、いつものように彼が寝転がっていた。
「ベッドの中にも下にも、なんだったら天井裏には全裸の大男がいるときた。全く以て安全な状況じゃないだろ」
「え? そうかな?」
「……」
呆れたとばかりにため息をつかれ、そのままひょいと持ち上げられた。首根っこをつかまれ、そのままベッドに連れて行かれる。私は猫とかハムスターじゃないんだぞと思いつつも、暴れれば余計に痛くなると分かっていたので、おとなしくしていた。
「どうしておとなしくしてるんだ?」
「おとなしくしてたほうが痛くないでしょ。それからオベロンってば、何か怒ってる?」
「怒ってるように見えるんだ。……自分の胸に手をあてて考えてみれば分かるんじゃないかな?」
「……」
「ああ、それともサーヴァントのことをおとなしくて従順な生き物だって思ってるわけ? きみの事なんてすぐにでも細切れにできるんだけど」
「しないでしょ、そんなこと」
ベッドに落とされ、そのままのしかかられ、首に手を置かれる。少しでも力を入れればポッキリと折れてしまうかもしれない。そう思っていると、はあ、と再びため息をつかれた。
「きみをすぐにでも殺せる、犯すことだってサーヴァントには簡単だ。そんな状況なのに良く暢気にしていられる。感心するよ」
「心配してくれてるんだね」
「俺の言葉を聞いてるわけ?」
「オベロンの言葉は嘘、なんでしょ?」
「……ああ、そうだよ」
諦めたのだろう。それに頬が若干赤いように感じる。照れている? そんな事は無いかと思いつつ、思わず彼の頬に手を伸ばすと、その手は取られ、引き寄せられた。
「んっ……」
「……」
犯すのは簡単だ。そう言ったのは彼だけれど、やっぱり優しいなと思う。分からせるのだって、本当にそうするのは簡単だ。でもそれをしない。それだけでも優しいなと思うのに、私がして欲しいことをしてくれるのだ。
本当は吐き気がする行為かもしれないのにと思いつつ、深くなっていく彼の口づけを受け入れるのだった。