【FGO:オベぐだ♀】100本ノック1(91~100) - 3/10

93、失わない色

黄色くて大きな花を見る。ああ、綺麗だなだなんてありきたりの感情を持ちながら、振り返ると、マシュやダヴィンチちゃんがひまわり畑に足を踏み込ませているところであった。

「オベロンは来ないの?」

「人が沢山いるところだろ? 今日は遠慮しておくよ」

「ええ-?」

ぶつくさと何か言い訳しているオベロンを仕方ないと置いて自分の部屋から出る。今更どうして私の部屋に居座っているのかなんて聞かない。聞いたところでベッドの柔らかさがちょうど良いからとか適当な理由をつけて逃げられるのだろう。

部屋からシミュレーターへと向かう。今日は特に何も予定が無く、だからこそ息抜きとしてみんなでひまわり畑でピクニックをしようという話になっていたのだった。護衛にマシュ、キャスター・アルトリア、それから子ギルくん。それ以外にも沢山のサーヴァントがシミュレーターに集まって、まるで夏にサバフェスが行われた時のようであった。

「やあやあ、みんな集まったかな? ……うん、集まったようだね。それじゃあ、シミュレーターを動かすよ!」

ゴウンゴウンとシミュレーターが動くときの独特な音が鳴る。その音を聞きながら目を瞑り、そして黄色い光景が広がるだろうと目を開く。そこには白が広がっていた。

「えっと……?」

「なんだい、マスター?」

「どうしてオベロンが?」

「どうしてって、きみが呼んだんじゃないか」

当たり前というように霊体化を解いて一緒に着いてきたオベロンに唖然とする。彼が少しだけ身体を動かして背景が見えた。黄色、黄色、黄色。辺り一面に黄色い花が咲いていた。

「わああ、すごいね!」

「そうだねえ。僕は秋の森の王様だからこんなに身震いするような風景を見たことが無かったけれど、マスターは見たことがあるんじゃないかい?」

「ひまわり畑に言ったことはあるけど、それでもこれはすごいよ!」

まぶしくて仕方が無いと言うように目を細める。ああ、綺麗だな。でもこんな風景を一番に見せたいと思った相手が目の前にいることが一番嬉しくて、彼の手に手を伸ばした。きっとこの手は取られない。彼が取るはずが無いと思っていると、手を絡められ、しっかりと握られる。心臓が跳ねるように鳴り響いた気がした。

「なんだい? して欲しかったんだろ?」

「確かにして欲しかったけど」

「しないと思った?」

「うん。でも、ありがとう」

綺麗だなあ、この風景を見続けられたらな、絶対にこの風景は忘れたくないな、だなんて思いつつ、みんなでここまで来たことを思い出し、振り返る。そこには少しだけ苦笑いしたダヴィンチちゃん達がいたのだった。