98、日常を生きる
朝のブリーフィング、お昼までは座学、昼食後には戦闘訓練と自主練。特異点が発生するなどの事象が無ければ一日をこのルーティンで過ごす。何年も続けている事だけれど、未だに飽きが来ないのはなんでだろうなと思いつつ、最近このルーティンに入ってきた新たな予定について、目の前に息を荒くしながら押し倒してくる男を見つつも考えていた。
オベロンと恋人的な意味でお付き合いを始めた。それを報告したところ、阿鼻叫喚の場となった。モルガンとキャストリア、それから清姫達はもちろんのこと、新所長やムニエルさんなど職員達、太公望や孔明さんなどのサーヴァント達も驚きのあまり口を開けて、次々に抗議の声を上げていたのだった。そうしてその騒ぎによって開かれることとなったサーヴァント達の競技会。レベル百二十まであげられていたオベロンが、抗議を行っていたサーヴァント達全員を叩きのめすことで終わりを迎え、晴れて公認の恋人となったのであった。
「なあ、良いだろ?」
「いいって?」
「今夜も」
「まあ、良いけど」
恋人となって身体の関係も持つようになった。そして、それから悩みが生まれた。オベロンは言葉とは裏腹に優しくしてくれるから良いけれど、それはそれとして、長い、回数が多い、頻度も多い。こんなことだけでは無いけれど、悩むところが大きいのだった。
「ねえ、オベロン」
「なんだよ」
「えっとね、その……毎日はやっぱり多いかなって思うんだけど」
「は?」
「だから、毎日エッチするのは流石に多いと思うんだよね」
何を言っているんだこいつはと言う表情でこちらを見てくるオベロン。とりあえず聞いてやろうと、私の両手にかけられていた両腕が解かれる。上体をそのまま起こされたことにわずかな淋しさを感じつつ口を開いた。
「その、毎日エッチしてることがダヴィンチちゃん達には筒抜けみたいで、今日だって」
今日のブリーフィングが終わった後に個別での呼び出しがあった。そこは医務室で、何故か人払いがされていることに冷や汗が流れる。
「立香くん、君は一日に何回妖精王と仲良くしているんだい?」
「えっと?」
「オベロンくんに魔力供給する事は止めないけれど、あげすぎてるのが目に見えて分かるからね。一部サーヴァントから苦情もきていたりするんだよ」
「苦情」
「ああ、そうさ」
気をつけなよ、と苦笑いされる。目の下にうっすらと隈があるダヴィンチちゃんにそんなことを言わせてしまって申し訳ないと思いつつ、オベロンに話して控えてもらうことにしたのだった。
「へえ、そんなことを言っていたわけだ」
「うん」
「全員で寄って集ったあげくに苦情、ねえ」
「うん、それも来てるから少し、ね?」
「え?ここでやめるって選択肢があるわけ? ここはむしろ……」
「え?……ちょっと? 何?」
首筋に顔を埋められる。そして首にピリリとした痛みが走る。
「いっ?!」
「ははっ、ざまーみろ」
鏡を手渡されてそこを見ると、くっきりと赤い跡がついていたのだった。