【FGO:サンぐだ♀】サンソンと立香と奥さんのお話

「ねえ。サンソンの、奥さんってどんな人だったの?」
少女はベッドに寝転がり、読んでいた本を興味深げに一度見た後に閉じて、こう切り出す。サンソンは、少女が急にそんなことを聞いてきたことに驚きつつ、何故そんなことを聞いてきたのかと目を本に向けると、成る程と納得した。
「僕についての本を、読んでいらしたのですね」
「うん。サンソンのこと、一応は知っているけれど、詳しくは知らなかったから。その、本人としては嫌だったりする?」
「いえ、いささか恥ずかしいような気持ちもありますが、僕から直接聞くよりも、整理された本から学ぶこともあると思いますから。それで、僕の妻について、でしたか」
「うん。出会う前に、その、色々と経験があったりしたのは意外だったけど、この人だって決めたなにかがあったりだとか、どんなところが好きだったのかなって」
ちょっとした好奇心のつもりで聞いたんだけど、今考えたらサンソンってそういう話はしなさそうだし、ごめん、何でこんなことを聞いたんだろう。
少女は話ながら頬を赤く染め、じたばたと手足を動かす。その拍子に本が手から離れ、それを空中で器用に手に取ったごつごつとした大きな手は、彼女を嗜めるように、ポンポンと、彼女の頭の上で本を数度跳ねさせる。
「あまり話したことはないですが、そうですね」
少女が見上げる横で、男はベッドの縁に座ったまま考える。愛しているところは、それこそ星の数以上に、話しきれないほどあるけれど、それを目の前にいる、年も若い少女に話してどう理解してもらえるか。一度目を瞑り、深く息を吸ってから、口角を軽くあげる
「マスターにも、秘密ではいけませんか?」
「あ、やっぱり奥さんについては聞いちゃNG。流石に個人情報だし、人に人の話を聞くのは失礼だったよね」
「いえ、まあ、僕以外に聞くときにはもう少し遠慮をした方がいいかもしれないですが、そういうわけではなく、愛している人のいとおしいところを、マスターであろうと知られてしまうのは、少し恥ずかしいということと、かわいらしいところは僕だけが知っていたいというところがありまして」
「あ、ああ、もうわかった。その顔と声だけで充分のろけだから」
「おや、そうですか。ですが、ご自分から聞きたいと」
「それでも、だよ。なんだか今のサンソンの顔を見たら、それだけで幸せと甘さでおなかいっぱいになるような感じだから」
「そうですか」
少女は首まで顔を真っ赤にし、頭の上で支えられたままになっていた本を受け取って本を読み始める。果たして文字を理解できているのか、それともただ目が滑った状態のまま読んでいるふりをしているのかはわからない。
青年は穏やかに流れ始めた時に再び目を閉じた。