【FGO:サンぐだ♀】追想の愛(R-18) - 1/5

「もしも彼に、もう一度会えるなら」―リグレットメッセージ―

……うん、これでよし」
藤丸立香は手を止めて、小さな瓶の中に今まで文字を書いていた紙を筒状にして落とし、手に収まるそれを胸の前で手を合わせるようにして持つ。そしてどこかへ祈るように目を閉じながら今までを思い出していた。最後のレイシフトであった今回も特殊な事情が重なったけれど、最終的には何事もなく誰も欠けることなく解決できるだろうと心の奥底では考えていた。その結果としての“彼”の喪失。彼の行動は事件解決の大きな役割となったものであったけれど、自身の慢心が生み出したものであったと彼女は理解していた。
「先輩、よろしいでしょうか」
「うん、大丈夫だよ。私こそラヴィニアの埋葬の前に時間を取ってほしいって言っちゃってごめんね」
「いえ。ここで起きたことを少し考えたいと言われたときには驚きましたが、その、先輩は」
「うん、サンソン。私のもとに来てくれたシャルルのことも考えていて。私、本当に大切な人はいなくならないだろうって思ってた。あの、最後の戦いのときにも、簡単にいなくなってしまうってことは分かっていたのにね」
ぼろぼろと涙が意志とは関係なく零れ落ちる。止めようとしても溢れ出るそれを、全てが終わったこの土地で抑えるすべを知らなかった。それも当然、いつかは還ってしまわなければならないものであったが、しっかりと別れる時間を取れるもの、泣いてしまうかもしれないけれど最後には笑顔で送り出せるものだと信じていたからで、彼の死はあまりにも暴力的で突然であったからである。
そのまま涙を流し続けていると、後ろからやってきていた彼女が横に座り、そのまま抱きしめられる。あの処刑台に吊られていた彼とはおそらく異なるであろう暖かな体温が、彼女が今を生きている、ということを証明するようで、ますます涙を溢れさせる。抱きしめてくれた彼女の肩が震えていることからも、彼女も自分と同様に涙を流していることを理解して、背に腕をまわした。
「せんぱ、い。ごめんなさい。今一番つらいのは、先輩なのにっ」
「だい、じょぶ。だって、悲しいのは、一緒でしょ」
力を籠めすぎないようにと抱きしめられていた腕の力が強くなり、少し苦しくなる。そのまま数刻、二人で抱き合うようにしていた。

すっかり静かになってしまった波止場の、船が止まっていたはずの場所に足を向ける。公会堂から持ってきた瓶をそのまま水の中に落とすと、ゆっくりと沖へ向かって流れだす。このセイレムも消えてしまうならあの瓶も同じく消えてしまうのだろう。そう思いながらも、瓶の中に込めた小さな願いが叶うなら、彼に届くなら、そう願わずにいられなかった。