【FGO:サンぐだ♀】追想の愛(R-18) - 4/5

クリスマスの夜に

飾り付けられた部屋に、クリスマス仕様のベッド。お夕食前までお待ちください、とマイルームが占拠されてから数時間。部屋を交換する形で、髪の毛をいつもより時間をかけて整えていた私は、感嘆で声が出なくなっていた。
「初めてクリスマスの準備をしてみたのですが、どうでしょう」
「凄いよマシュ。本当にこれ全部マシュがやってくれたの」
「全て飾り付けさせてもらいましたが、ありがとうございます。喜んでいただけて、嬉しいです」
でも、私からはまだプレゼントがあるんですよ。先ほど変わってもらいましたが、今日はサンソンさんに先輩の部屋の警護をしてもらいます。勿論マイルーム内は特別防音仕様になっていますし、蓄音器でアマデウスさんのピアノ曲を流すことも可能です。
「ちょ、ちょっと待って」
サンソンと実質二人きりでこの飾り付けられた部屋で過ごす。それに防音仕様にしたってことはどんな音を出してもばれないわけで。クリスマスの日本での恋人たちの過ごし方を、まさかマシュが知っているはずもないとは思いつつ、これ以上の混乱をよばないために話を遮る。
「えっと、マシュはこの部屋の話も、シャルルにしたのかな」
「勿論させていただきましたよ。そういえばサンソンさん、今の先輩と同じような表情をしていましたが、やっぱりなにか余計なことをしてしまったでしょうか」
こてん、と擬音がなるように首を傾けるその仕草はマシュが全く自分がしたことの意味を理解していないことを表していた。

「これは、本当に素晴らしいですね」
感嘆の声をあげながらもまじまじと部屋の中を見渡すサンソン。暖かな湯気と香りを出している七面鳥や簡単な食事、それにブッシュドノエル。来る途中に食堂から運んできたそれらは今、彼が立っている横の小さな机の上におかれていたが、温かいうちに食べて欲しいという、それらを作った食堂のスタッフの思惑に反して手がつけられない状態にあった。
「マシュ一人で準備したっていうから、本当にかなわないな」
マシュやシャルルだけでなく、いつもみんなに助けてもらったり、バレンタインの時だって、そんなにいいものは作ってないのに、みんなをまた召喚できそうな触媒とか、明らかに現代の価値で考えたら一生を暮らせそうなものまでもらったりしちゃったもん。そう、溜息をもらす。
「マスター、貴女は自分のことを過小評価しているようですね。確かにマスターは僕たちと違ってできることは限られているし。けれど、りつかが僕たちと向き合ってくれたからこそ心を開いて協力をしたり、そうやって、贈り物をしてくれたりするのではないかな。マシュもきっとりつかがマシュのことを思ったからこそこうやって、僕とリツカが一緒に過ごせる時間を作ってくれたんだろう」
勿論この料理を作って下さった彼らだってそうですよ、と微笑まれる。
「それだったら好意に甘えて、ちゃんと食べないとね」
ええ、という声とともに引かれる椅子。そこに座れば二人っきりのディナータイム。