【FGO:サンぐだ♀】風邪

「ごほっ、ごほっ」
「マスター」
「ごほっ。ご、ごめん、サンソン」
どこか調子が悪いと言っていたのは一週間前。全員が止めるのを聞かずにシミュレーションで戦闘訓練をしていたのが四日前。そうして二日前に動けないほどの、腹痛を伴った熱を出したのだった。
「僕は大丈夫ですが。マスター、食事はとれますか?」
「喉、痛いけど、食べておきたい、かな」
「でも食べれるかはわからないんですね?
「うん、ごめん。ちょっとまだ気持ち悪いかも」
気持ち悪さが止まらないといいつつ、青い顔をしたまま横になっている立香に何を食べさせるのが良いかと考える。前日におかゆを食べさせようとしたときには、喉を通らずにせき込んでしまったことを考える。何か食べやすい者。固形物ではないほうがいいかもしれない。それでいて栄養があって、のどの痛みや気持ち悪さ、腹痛を緩和できるもので。そう考えている間に思い出す。
「わかりました。今の貴女でも食べれるものを用意したいので、少し時間をもらえますか?」
「うん、待ってるね。その、本当にごめんなさい」
「ええ、今度はこうなる前に無理はしないでくださいね」
約束ですよと声をかけてから、立香が待っている間に食堂へ行って目当てのものを探す。冷蔵庫の、確かジャムと同じあたりに在ったそれを見つけ出して持って行った。
「マスター、お待たせしました」
「サンソン、おか、ごほっ」
「ああ、無理はしないでください。まだ横になっていていいですから」
起き上がろうとして咳き込む立香の背中をさすって落ち着かせた後、辛いならもう少し寝ていてもいいですよと横になるように促す。しかし、立香はそれに首を横に振って、サイドテーブルに置かれた、サンソンの持ってきた瓶を見た。コンポート。それを風邪の時に食べるものとしては馴染みがなかったのか、小さく首をかしげて聞いてきた。
「それって、リンゴの、コンポート?」
「ええ。ただコンポートと言っても固形ではなくて、ジャムのようになるまで煮詰めたものですね」
「ジャム……すりおろしリンゴ、みたいなかんじ、かな?」
「ええ、そうですね。フランスでは腹痛がある時によくこれを食べるようにといわれているのですよ」
整腸作用があるこれはそれだけではなく、体調を整えるための手助けをしてくれるものである。ただ、細かく説明するのはまた後日。食べますかと聞くと、立香は少し考えてから口を開いた。
「その、食べさせてほしいなって、いっちゃだめ、かな?」
「マスター?いえ、そういうことですか。リツカ、いいですよ?」
では口を開けてくださいね。そう言いつつ、瓶のふた開けて。病気の心細さも含めて甘える恋人に甘いコンポートの乗ったスプーンを近づけるのであった。