【FGO】聖杯をあなたへ - 1/10

アーラシュ

「種火回収お疲れさま」
「おう、マスターもお疲れさん」
今日もよく集めたなと、わさわさ頭を撫でられる。ロビンやサンソン辺りに見られたら絶句されそうなぐちゃぐちゃ具合になった髪の毛だが、お互い気にせずに笑いあい、そのまま保管庫へと足を運ぼうとすると、そういえばとアーラシュがカードを手渡してきた。
「何度目だったかは覚えてないんだがな、礼装が落ちてたぞ、マスター」
「え、本当に?でも、今日はカレスコおじさんとカルデアランチタイム、それからフォウムズくんぐらいしかつけてなかったと思うけど、ありがとう」
アーラシュから手渡されたそれを受け取ろうとして、立香は固まる。
「え、えっと、アーラシュ?」
「ん、どうした?」
「これって」
差し出されたそれを本人にそのまま見せる。アーラシュはそれをしばらく眺めたあと、照れ臭そうにしながら笑いだした。
「ははっ、悪いなマスター。最初に気づいてれば、もう少し凝った渡し方もできたのにな」
「悪いなじゃなくて、これって、絆礼装ってやつだよね!何でこんな恥ずかしい渡し方してくるの!」
「だから悪かったっていってるだろ。それにしても、これが絆礼装ってやつか。信頼が形になって見えるってのは、佳いもんだな」
ぐぬぬ、と立香が頭を抱えるようにしていたが、ふとなにかを思い出したかのように、アーラシュを見上げる。
「そういえば、絆礼装が出てきたら渡そうと思っていたものがあるんだった」
「お、なんだ?」
「こっちこっち!」
手を引っ張ってついてくるように促す。アーラシュはそんなことをしなくても逃げてはいかないぞ、と言いつつも、早足で前を行く立香を追っていった。
「ちょっとここで待っていてね」
「ここは、聖杯保管室か」
他の素材も保管されているけれど、主に聖杯の保管に使われているので、聖杯保管室と呼ばれている部屋。その部屋の前に連れてこられ、なるほどなという顔をする。
マスターはきっと『とっておき』を強くするために聖杯を渡してくるのであろう。願望器としての使い方をせず、もしかしたらそのように使っているのかもしれないが、霊基拡張のために使うなんて面白い使い方をするもんだと思いながら、立香を待ち続けた。
「ごめん、遅くなって」
「待ってないぞ?それで、なにか渡したいものがあるんだろ?」
「もしかして視た?」
「視なくても、こんな場所に連れてこられたらわかるだろ」
「そうか、そうだよね。じゃあこれ!」
立香から差し出されるは黄金の杯。アーラシュは珍しそうに目を細目ながら受け取るのだった。