【FGO】聖杯をあなたへ - 10/10

シャルル=アンリ・サンソン

「はい、どうぞ」
「マスター、これは?」
「聖杯です!」
もう持ちきれないと言われ、渡すことをしなくなった聖杯をもう一度手渡す。目の前にいるサンソンは困惑の表情を浮かべているが、霊基再臨以外の用途として持っていてほしいと頼むと、マスターの願いであるならばと受け取ってくれた。
「聖杯は分かりますが、なぜ今さらになってこれを?霊基再臨としてはもう、使えないと以前に申しましたが」
「それは分かっているけれど、それとは別で、私は否定したいけれど、君には君の願いがあるかなって思って」
「それは、セイレムを経て考えたことですか?」
「うん」
セイレムで彼は、彼自身の願いを叶え、消えていった。それを間近で確認し、自分の気持ちに気づいたのもその時であるが、それとは別に、彼が望むならという気持ちも浮かんでいたのだった。
「君の願いは、きっと君が英霊であることから君を引きずり下ろすだろうから、満たされてしまうことは、英霊シャルル=アンリ・サンソンとしてあってはいけないことだから、でも、それでも」
「ええ、ありがとうございます。英霊の一騎としてではなく、マスターは僕の気持ちを」
「うん。許されないけれど、個人としては叶えてほしい。だから、退去するときにでも、使えるなら使ってほしいなって思って」
「わかりました」
使えるものかはわからないけれど、彼の願いを最後にかなえてくれるなら。彼個人を救ってくれるなら。
使っていない聖杯は保管庫に入れておかないとダヴィンチちゃんに怒られるかなと思いつつ、サンソンに渡したままにしておくのであった。