【FGO】聖杯をあなたへ - 4/10

ベディヴィエール

 聖剣は元の持ち主に戻り特異点は修復された。そのさなかに召喚可能となった霊基が一つ。レイシフトから戻って諸手続きを済ませ二日。ようやく休憩をと言い渡された立香はすぐに召喚されたであろう彼のもとへと向かった。彼はすでにシミュレーターで疑似空間を作り出し、彼自身が過ごしてきた世界、聖剣を返すことができなかったかの湖のような透き通った湖面を眺めていた。
「ベディヴィエール郷、ここにいたんだね。」
「ええ、マスター。メディカルチェックだったということもありまして、こちらで過ごしていたのですよ。」
なにか、御用でしたか?そう問う彼は召喚された瞬間に種火をマスターから分け与えられ、他サーヴァントの助力もあってか、異例の速さで鍛錬を積んでいて、今すぐにでも聖杯を譲渡できる状態であった。立香は第六特異点で彼の千五百年年にも及ぶ旅の果てを見て。それでも果てぬ彼の忠誠心、彼の生き方、彼自身に心を奪われていた。それと同時に、彼の力を必要だとも感じていた。
サーヴァントは元となるものからのコピーという形で召喚される。その関係上召喚されたばかりでは、本体とは異なって生まれたばかりといってもよい、現代を生きるためのあらゆる知識があるだけの未熟な状態である。そんな状態の彼を鍛錬したのは今まで立香が聖杯を渡してきたフランス革命期の処刑人と、緑の弓兵の二人であった。医術で切り裂かれてつぶれた毒に侵された体を回復させられ、再び切りつけられる。それでも彼は時に耐え、時に加えられる攻撃をよけ、逆に致命傷となる一撃を与えようとした。それを繰り返し、元々の能力差で一瞬の隙を見せた黒い外套を纏う彼の首筋に銀の義手を突き付ける。二人はもちろん彼を殺すためではなく、次の特異点に向かう前に彼を生かし、間違えることのないまっすぐに進むマスターにとっての最良となるために、と行っていたのでベディヴィエールにこれ以上の鍛錬は必要がないだろうと開放したのであった。勿論この鍛錬に関してはマスターに報告されて、それをねぎらうためにも彼のもとへと向かっていたのだ。
「その、ベディぶっ……
「ああ、私の名前は日本人が発音するのは難しいですよね。どうか愛称であるベディとお呼びください。」
「ありがとう、ベディ。それでその、さっきまで二人を相手にしてもらっていて、私が言うのもおかしいかもしれないけど、お疲れ様」
「ありがとうございます。ですが、そのことでしたか。あの二人にはマスターも特別な思いで接しているのでしょう?私から見ても彼らは熟練の、マスターの騎士のようでありました。私にはすでに心の決まった王はいますが、また別のも意志として、マスターに仕えることができればと。」
人理修復が終わるまでですが、我が導き手に忠誠を。立香の手を取り、忠誠の証を落とす。
「ふふ、ベディは本物の騎士だったね。私は未熟な魔術師だけれど、こちらこそ、よろしくね」
強くなった君に渡そうと思っていたものだけれど、と立香は聖杯を渡した。